松山英樹のメジャー優勝ならずby井上透プロコーチ
まず聞いたのは、今年ブレイクした川岸史果、成田美寿々らを指導するプロコーチの井上透。
「広く言えば、松山英樹が日本人としてメジャーで優勝するチャンスが何度かあったが、残念ながら獲り損ねたことですね。でもあそこまで近づいたのは本当にすごいこと。もしメジャーで優勝していたら日本ゴルフ界にとても大きなニュースになっただろうと思いますね」
と、松山英樹の大活躍を挙げてくれた。全米オープンでは2位タイ、全米プロでは結果的には5位タイながら、優勝まであと一歩まで迫った。松山の勇姿は、日本のゴルフファンすべてに希望を与えてくれた一年だったのは間違いがない。
「女子で言えば、もちろん、自分の契約している選手達の活躍もすごく嬉しいのですが、鈴木愛選手が日本人としては久しぶりの賞金女王になったことですね。今季の平均ストローク1位は申ジエ選手でしたが、本当の強さは平均ストロークに現れると思いますので、そこを目指して頑張ってほしいですね」
と、女子ツアーに関しては森田理香子以来4年ぶりに日本人賞金女王となった鈴木愛の快挙を挙げてくれた。
井上同様、松山の活躍を挙げるのはゴルフスウィングコンサルタントの吉田洋一郎。
「『全米プロ』前週の『WGCブリヂストン招待』での松山英樹の優勝を挙げます。この勝利で松山英樹は世界ランキング2位となりましたが、本当の意味で世界のトッププロたちの見る目が変わったのはこの試合ではないでしょうか。最終日61というタイガー・ウッズを彷彿とさせる爆発的なチャージは、今後の試合で『最終日にヒデキが追い上げてくるかもしれない』というプレッシャーを与えることになったと思います。WGC、全米プロと2週間に渡って練習日から最終日まで現地観戦していましたが、アイアンショットの精度は他の選手を圧倒していました。来年はメジャーの舞台でWGCのような最終日のチャージが見られることを期待したいと思います」
統計学的見地からゴルフを読み解くゴウ・タナカは、ちょっと意外な選手の登場が印象に残ったという。
「私にとっての重大ニュースは、パク・ソンヒョン選手の全米女子オープン制覇ですね。2016年に韓国ツアーで年間7勝を挙げ、今季から米ツアーに参戦した23歳のルーキーですが、初優勝をメジャーで達成するという快挙を成し遂げました。彼女は相当スウィング偏差値が高いです。スウィング分析の立場から見ても鳥肌レベルの完成度です。モチベーションが続く限り世界のトップで戦い続けること間違いなしです」
パクは現在世界ランク2位。日本のゴルフファンにはまだまだ馴染みが薄いが、覚えておきたい選手だ。とくに、そのスウィングはタナカの言う通り圧巻の一言だ。
「濱邉教授のパットの授業」でおなじみの大学教授でパット研究家の濱部浩一教授は、ゴルフ界全体の取り組みを評価した。
「ゴルフ業界は全体として下降気味と言われていますが、業界全体がゴルフ人口減少に危機感をもち、きめ細かなサービス向上に努めてきた1年という印象です。業界団体のみならず、大学体育連合、大学ゴルフ授業研究会なども頑張って後押ししてきました。そして、少しずつ成果が出てきていると思います」
ゴルファー人口の減少が言われる中、来年に向けて明るい兆しが見えてきていると観測してくれた。
全米オープンから国内男女ツアー会場、街角のレッスンスタジオからシャフト工場まで取材するみんなのゴルフダイジェスト編集部員でプロゴルファーの中村修は、ギアの進化を挙げる。
「新しい発想で話題を呼んだキャロウェイ『エピック』の登場と大ヒットが印象に残ります。ほかにも、男女賞金王を獲ったピンのG400ドライバー、10代目を迎えたダンロップのゼクシオ テンなど、印象的なドライバーが多く登場しました。ギアの進化、その余地がまだまだあるんだと感じさせられた年でしたね」
ほかにも、宮里藍さんの現役引退、宮里優作の賞金王戴冠、ジャンボ尾崎のエージシュート達成、セルヒオ・ガルシアのマスターズ制覇、谷原秀人の海外でポイントを稼いでのマスターズ出場、小平智と古閑美保さんの結婚、アン・シネの日本女子ツアー参戦、畑岡奈紗の日本女子オープン連覇、タイガー・ウッズの逮捕と復帰、石川遼のPGAツアーシード喪失、松山関連でいえば結婚と第一子誕生というおめでたいニュースもあったし、安倍晋三首相、ドナルド・トランプ米大統領とのラウンドも大きなニュースとなった。
たくさんのニュースがあった2017年のゴルフ界。2018年も、たくさんのいいニュースが世界中から届くことを期待したい。