プロゴルファーは口々に「アマチュアは、ピン方向を狙わずに、グリーンセンターを狙ったほうがいい」という。実際のところ、アマチュアのみならず、プロでも「ピンを狙うか、センター狙いか」は悩みどころなのだという。どういう状況で狙ってよくて、どういう状況では避けるべきか、考えた。

狙ってつければ勢いに乗れるが、狙ってミスすると自滅する

ピンを狙うべきか、狙わざるべきか。「どちらが正解ということはなく、自分の中で判断基準を設けることが大事」と語るのは、プロゴルファーの中村修だ。

「たとえば2010年と2015年の賞金王であるキム・キョンテは、よほどのことがない限り積極的にピンを狙いません。安全でラインの難しくないエリアにしっかり打っていき、そこから4~5メートルのパットを入れてバーディを獲るのがキョンテの強いときのパターンです。そのエリアに打てる技術があるのだから、ピンを狙ってもいいんじゃないかと思うのですが、ライや風、距離など、狙うか狙わないかの彼なりの判断基準を満たさない限り、決して狙わないと言います」

一方で、ここ4年間つねに賞金ランク5位以内をキープする女子ツアーの実力者、シン・ジエはピンを狙い続けるアグレッシブなゴルフが特徴で、2017年は平均ストローク1位の栄冠に輝いているから、まさしく“どちらが正解”とは言いがたい。

積極的にピンを狙うゴルフは成功するとイケイケで手がつけられなくなる一方で、わずかなミスから流れを失うリスクも内包している。男子ツアーの若手のホープの一人、重永亜斗夢は、2017年の前半は「ピンを狙う」ことによって調子を崩してしまったと語る。

「僕はピンをガンガン狙うタイプではないのに、試合になるとピンを狙って自滅していました。やっぱり優勝したいという思いが強すぎたんです。夏場以降はそのあたりを考えて、なんとか盛り返してシード権は確保できました。来季はキャディさんを一人に決めて、攻め方のさじ加減を客観的に見てもらおうと考えています」

画像: 2016年の「日本オープン」でラフからピンを狙うアダム・スコット

2016年の「日本オープン」でラフからピンを狙うアダム・スコット

このコメントから伺えるのは、改めて攻める・攻めないの基準を決めることの重要性。そこで、スコア100前後のアマチュアゴルファーを基準に、どのような条件が揃えばピンを狙ってもいいかを、中村に考えてもらった。以下に列挙してみよう。

・ライがいい
・残り距離が100ヤード以内
・ピンが見えている
・ピンが切られているサイドにバンカーなどハザードがない
・ピンが左右の端から10ヤード以上離れている
・風が強くない(ピンフラッグがはためいていない)
・ピンに向かって風が吹いていない

このような条件が揃っていれば、アベレージゴルファーであってもピンを狙っていい。しかし、条件を一つでも満たしていなければ、おとなしくグリーンセンターを狙ったほうがスコアは作れる。

では、たとえば「バーディならばベストスコア更新という状況でのパー4のセカンドショット」ならばどうか。

「それでもライが悪ければ、狙うべきではありません。ラフや傾斜地、薄芝などの悪いライからピンに寄せるよりも、そのショットでグリーンの近くまで運び、そこからチップインを狙うほうが確率が高いからです。ゴルフは確率のゲーム。最終的には、常にいいスコアになる確率が高いか否か、そこが判断基準になると思います」(中村)

プロが強調するのは、とにもかくにもボールのライ。それが悪ければ、プロであってもピンは狙わないという。アマチュアゴルファーは、ピンを狙うか狙わないかの前に、まずは落ち着いて自分の「足元」を見つめる必要があるようだ。

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