マイナス8度でインパクトしてみたら……結果は!?
インパクトでロフトが「-6度」でも良い転がりが得られると報告しました。その後、ロフトのマイナス度合いを更に増やし、「-8度」にして実験してみました。

実験室の人工グリーンでテスト。マイナス8度で転がりはどうなった?
すると、インパクト後60センチ後の地点で計測したボールの回転数は「-6度」の時より上がった(=転がりが良かった)ものの、5ヤードと8ヤードの距離設定で試すと、インパクト直後に大きくバウンドし、ボールの最終静止地点にもバラツキが生じてしまいました。
一方2ヤードの距離、すなわち5ヤードと8ヤードと比べてタッチが弱い設定では、「-8度」のインパクトでもバウンドはせず、転がり(回転数)も「-6度」より高いことがわかりました。つまり、短い距離ならいいけれど、ある程度以上インパクトが強くなってくると弾んでしまうと言うことです。
マイナスロフトとハンドファーストの関係

図1.パターのロフトをマイナス方向に立てるには、ハンドファーストを強める必要がある
図1は、長さが34インチで、ロフトが0度のパターのロフトをマイナス側に立てていった場合、グリップエンドが何センチハンドファーストになると、ロフトが何度になるかを表しています。1度マイナスロフトにするためには約1.5センチハンドファーストにすればよいことがこの図からわかり、転がりの良いマイナス6度にするためには、9センチハンドファーストにする必要があることがわかります。
ここで問題となるのは、パター自体が持つリアルロフトが何度なのかということです。
表1はパッティングをレベルストロークで行った場合のハンドファースト(34インチのパターで算出)の度合いとロフトの関係について、実験結果をもとにまとめたもの。横軸をハンドファーストの度合い、縦軸を使用するパターのロフトで示してあり、たとえば「ロフト3度のパターで9センチハンドファーストにすると、インパクトロフトは-3度になる」といったことを読み取ることができます。

表1.パターのロフトとハンドファーストの度合いの関係を示している
そして、現在市販されているパターでマイナスロフトのものはほぼ皆無と言ってよく、「0度や+1度ロフトのパター」も数が多くはありません。読者の多くが使用しているパターは、+2〜4度ロフトのパターと思われます。そのため、マイナスロフトでインパクトしようと思ったら、ハンドファーストの度合いを強める必要があるのです。

濱部教授はインパクトから60センチまでの距離での順回転数の多さを指標に転がりの良さを判定。他の要素も加味されるが、打った後すぐに順回転に移行し数多く転がるものを「転がりがいい」と定義している。写真はパッティングする松山英樹
今回までの実験結果から、インパクトのロフトが「-8度以下」と、「+1度以上」はいずれもインパクト後にボールがバウンドし、あるいは横滑りをすることで、回転数や転がった距離にバラつきが生じることがわかっています。それが、表1において赤で表示された“レッドゾーン”です。
それに対して“ブルーゾーン”は筆者が推奨する「-1〜-6度」のエリアです。また、“ホワイトゾーン”はレッドとブルーの境界線として明示しました。
さらに、ブルーゾーンの中でも-1度より-6度といったように、マイナスロフトの度合いが強いほうが、転がりは良くなります。ですので、プロやトップアマは-5度~-6度あたりにねらいを付け、パットに少し悩む一般読者はブルーゾーンのセンター、すなわち-4度インパクトを目指したらどうでしょうか。試合後半の荒れたグリーンや上りのショートパットなどは、とくにこの「転がりの良さ」が勝敗を決すると思います。
最近でこそ+2度や+3度ロフトのパターが出てきていますが、大昔から5年ほど前までは、パターのロフトは+4度が一般的でした。表1のロフト+4度の段を見てもらうと分かりますが、ロフト+4度のパターを-1度でインパクトするためには、7.5センチハンドファーストにする必要があります。-6度のインパクトロフトにするためには15センチ(表の枠外)ものハンドファーストで打つことになり、相当な違和感があるのも事実です。
いずれにせよ、現実的にマイナスロフト打とうと思ったら、超ハンドファーストで打つことが答えになるのでしょうか? 実は違うのです。答えは、ロフトだけでなく、ストロークの軌道と密接に関わっているのですが、それはまた別の機会にお伝えしようと思います。