野茂投手のメジャー挑戦が日本のゴルフ界を変えた
ゴルフに限らず、スポーツイベントは生放送(ライブ)で見ることが大前提であり、それこそが最大の魅力です。しかし、日本のゴルフ中継は、つい最近まで専門の放送局がなく、地上波では新聞社やテレビ局が主催する大会でさえ、試合終了まで放送されることはありませんでした。
1980年代半ばまで、日本の国内ツアーは中継で見られても、世界最高峰の米ツアー(USPGAツアー)や、欧州ツアーを見る機会は、ほとんど皆無。唯一、米ツアーを中心とした海外ツアーの情報を得られたのは、日本テレビが放映権を買い、週末の夜に前週のトーナメントをダイジェストで放送していた『ビッグイベントゴルフ』だけでした。
そんな日本のゴルフ中継の現状を、ガラリと変えるきっかけを作ってくれたのが、実はアメリカのメジャーリーグで活躍した、野茂英雄投手なのです。
1995年、野茂投手は太平洋を渡り、メジャーリーグのロサンゼルス・ドジャースに移籍しました。
このときに、NHKが野茂投手が登板する試合をBS局で放送するために、メジャーリーグの放映権を買ったのですが、「一緒に米ツアーの放映権を買わないか?」という話になり、メジャーリーグとツアーの放映権をまとめて買うことになったのです。
ちなみに、当時のNHK会長は、奇しくも、日本ゴルフツアー機構(JGTO)の名誉会長である海老沢勝二さんでした。
NHKが放映権を買ったことで、それまでは『ビッグイベントゴルフ』でしか見ることができなかった米ツアーが、ようやくライブで見られるようになりました。
野茂投手がメジャーリーグへ移籍し、その後、大活躍したことがキッカケで、次々に海を渡る選手が現れ、個人のレベルが上がり、また同時に、日本の野球全体のレベルも向上しました。
そして、ゴルフでは、日本にいながらにして、世界トップレベルのプレーがライブで見られるようになり、欧米の最先端のスウィング理論やテクニックなどが、情報として日本に入ってくるようになりました。この移籍は、野球界だけでなく、ゴルフ界にとっても、多くの財産を残してくれたといっても過言ではありません。
「ゴルフは100球打つより見てなんぼ!」(ゴルフダイジェスト新書)より
写真/姉崎正