「とにかく飛ぶ」か「ほどよく飛ぶ」か
ここ1、2年、“飛び系“と呼ばれる、飛距離性能に優れたアイアンがゴルファーの関心を集めている。実際のところ、これらのアイアンは売れ行きもいい。2017年の売上では、ヤマハ「インプレス UD+2」、テーラーメイド「M2」、キャロウェイ「エピックスター」といった、激飛びが特徴のアイアンが売上げランキング入りした。「エピックスター」に至っては、9月に発売されたにも関わらず、年間通しての売上でも上位になるほどで、メーカーでも納品が追いついていない状況だという。
これらのアイアンは、7番アイアンのロフト角が30度未満とかなり立っている(※UD+2が26度、M2が28.5度、エピックスターが26度)。30年前のアイアンと比較すると、3番手分ロフトが立っていることになる。それだけでは具合が悪いので、7番アイアンとして機能するように、ボールを上がりやすく、やさしく作っているのが現代のアイアンだ。異なる素材をいくつも採用し、構造も複雑になるので、メーカーも技術を発揮しがいがあるだろう。
こうした激飛びアイアンだけでなく、中上級者が満足する操作性があり、それでいていつもより飛ぶ、いわば“ちょい飛び系”アイアンもある。昨年の発売以来、非常に売上が好調な、タイトリスト「718 AP3」とピン「G400」はその代表格だ。
いわゆるプロモデルと比べると、1番手以上の飛距離アップが可能で、ボールも高く上がる。ヘッドの周辺部に重量を配置し、スウィートエリアが広いのも特徴だ。それまで難しいプロモデルを使っていた層からの、「もう少し飛ばしたい」、「もう少しミスに寛容であって欲しい」というニーズに応えたものだ。
つまり、飛び系アイアンには、2種類がある。とにかく短い番手で飛ばしたい激飛びアイアンと、操作性や打感などは犠牲にしたくないが、今よりも飛ばしたい、ちょい飛びアイアンだ。現代の売れ筋は、ほぼこの2種類でしめられている。
アイアンは、距離を打ち分けるクラブだけに、ただ飛べばいいというわけではない。飛び系アイアンを購入するゴルファーもそのあたりはよくわかっているもので、購入の基準となるのは、ショートアイアンでこのくらいは飛ばしたいという自分が想定している飛距離だ。7番で150ヤードは飛ばしたいと考えれば、それが160ヤードでも170ヤードでもダメで、150ヤード飛ぶアイアンを買う。
飛び系ばかりが売れる時代だが、例外もある。その代表はキャロウェイ「Xフォージド」(2017年モデル)。軟鉄鍛造の軟らかな打感が魅力的なモデルで、4年ぶりのモデルチェンジということもあり、固定ファンや軟鉄にこだわる層にヒットしている。
様々な飛び系アイアンに、少しのプロモデル。今後もこの傾向は変わらないだろう。