名前は似ているのに、同じ7番でロフトが2度違う!
まずは「M3/M4」から比較してみよう。この2モデル、同じ名前のドライバーが話題だが、ドライバーは「調整機能あり/なし」が差異で、基本的にはどちらも中上級者向けのモデル。しかし、アイアンはスペックからして大きく異なる。
両者の違いはロフトを見るとわかりやすい。M3は7番で30.5度、M4は同じ7番でも28.5度と2度違う。番手間のロフト差はだいたい4度なので、ほぼ半番手違うことになる。ちなみに、現在大ヒット中の国民的クラブ「ゼクシオ テン」の7番アイアンのロフトは29度。人気のプロモデル「718AP2」の7番は33度であることから、M3は「やや飛ぶプロモデル(セミアスリート)」、M4は「激飛びまでいかない飛び系」といったイメージのロフト設定だ。
「実際に打ってみると、M3はソールとソールとフェース面上に配されたスリット(溝)の効果か打感が軟らかいですね。数値を見ると、スピン量が多すぎず、風に強い弾道と言えます。M4はM3に比べてロフトは2度立っているにもかかわらず打ち出しが1度高く、スピン量が約1000回転少ない。そのせいもあって、8ヤードほど飛んでいます」
M3:飛距離 175Y スピン量 5313回転 初速55.2m/s 打ち出し角 22度
M4:飛距離 183Y スピン量 4513回転 初速55.4m/s 打ち出し角 23度
M4のほうがロフトが立っているのに打ち出しが高いのは、おそらくソールの幅が広く、より低重心になっているから。低重心にするメリットは、打ち出しが高くなり、スピン量が減らせること。つまり飛ばしに有利ということで、そこを見てもM4はM3よりも“飛距離重視”だといえる。そして、M4のほうがミスヒットにも強い。M3は中上級者、M4はスコア100前後から80台を目指すゴルファーの使用が想定される。
タイプDは7番でロフト26度
続いてVG3とVG3タイプD(以下、タイプD)を比較してみよう。7番アイアンのロフトで見るとVG3は30度、タイプDは26度と“1番手”違う。おさらいすると、M3は30.5度、ゼクシオ テンは29度、M4は28.5度だった。VG3はM3とほぼ同じカテゴリーだが、タイプDはM4よりさらに2.5度もロフトが立っており、ヤマハのインプレスUD+2や、キャロウェイのエピック スターが代表選手の“激飛び系”に分類されるクラブだと予想される。
VG3:飛距離 175Y スピン量 5270回転 初速55.4m/s 打ち出し角 22度
VG3タイプD:飛距離 192Y スピン量 3997回転 初速56.6m/s 打ち出し角 20度
「数値を見ると、同じ7番でも17ヤードの飛距離差がでました。VG3がイメージした弾道が打ちやすいクラブだとしたら、タイプDは低めのライナーボールで飛んでいく感じです。また、VG3は吸い付くような打感も好印象。タイプDも弾きが強いものの、打感も悪くはありませんでした」(菅谷)
VG3が中上級者向けのセミアスリートモデルだとしたら、タイプDはとにかくアイアンでも飛ばしたい層向け。名前は似ているが、中身はまさしく大違いだといえる。
さて、今回は4モデルのピッチングウェッジも試打した。わかりやすく飛距離のみ比較してみよう。
M3(ロフト45度):133ヤード
M4(ロフト43.5度):136ヤード
VG3(ロフト44度):135ヤード
VG3タイプD(ロフト38度):152ヤード
M3とM4は、7番アイアンほどPWの飛距離差がなく、一方のVG3はPWのほうが飛距離差が見られた。それだけタイプDが飛ばしに特化しているわけだが、「タイプDは上がりやすさも兼ね備えているから、飛距離が落ちてきた層がアイアンでグリーンを狙うのに威力を発揮するはず」とは菅谷プロの弁。
今回試打した4モデルを比較すると、M3とVG3は“やさしいプロモデル=セミアスリートモデル”という印象でよく似ている。そしてM4がど真ん中のアベレージゴルファー向けモデルなのに対し、タイプDは“激飛び系アイアン”と個性が大きく違うことがわかった。アイアンに飛距離を「どの程度」求めるか。それによって、人それぞれ最適なクラブは異なってくるだろう。
このように、名前は似ていても、その性能は大きく違うことがゴルフクラブではよくある。自分の腕前や飛距離、アイアンに求めることを知った上で、選ぶのがベストアイアンに巡り合うためのコツだ。