ゴルフ専門チャンネルの解説者として知られるプロゴルファーのタケ小山は、日本とアメリカのツアー中継は根本的に違うと話す。世界との放送の差は一体どこなのだろうか? 著書「ゴルフは100球打つより見てなんぼ!」から今日から役立つゴルフ雑学をご紹介。

アメリカはツアー側が番組を制作

日本の地上波放送局の場合は、テレビ局のスポーツ担当が番組を制作しているのに対し、米ツアーでは「PGAツアープロダクション」という、米ツアーが設立した、ゴルフ中継だけを専門に行う会社が番組を制作しているます。これは大きな違いです。

ツアー側が試合の映像も制作管理するので、ゴルフの試合だけを担当している専門のディレクターやプロデューサーがついています。日本のテレビ局のように、ひとつのトーナメント中継が終わったら、次は2カ月先まで中継がなく、その間は他の競技の中継など担当し、ゴルフに関しては空白状態、ということがありません。その試合に至るまでの賞金王争いの行方や各プレーヤーの情報を、ディレクターやプロデューサーが年間を通して追っているので、中継のクオリティがすこぶる高いのです。

私がアメリカで試合に出ていた頃も、スタッフが朝一番から万全の態勢で中継をしていて、優勝争いを繰り広げている最終組の選手が、スタート前のドライビングレンジに入ってくるところから、ライブでずっと流していました。

たとえば、最終日最終組で優勝争いをしているタイガー・ウッズ選手が、スタートホールのティアップまでにどのくらいの時間をかけてウォームアップするのかとか、どんな練習をしているのかといった、貴重な情報も知ることができる。こういう部分は、ゴルフ中継を専門にしている局だからこそ、できることでしょう。

画像: ウォームアップから試合終了まで放送することは貴重な情報を得るチャンスが増えるのだ

ウォームアップから試合終了まで放送することは貴重な情報を得るチャンスが増えるのだ

中継に必要な資料や原稿だって、日本の場合は局が用意したものを渡されて、それを読んで、ときには補足したりするだけですが、欧米の中継では実況を担当するアナウンサーや解説者が、すべて自分で作成して持ち込んでいるのです。

さらに、各ホールにはそれぞれ担当の解説者がついていて、注目の選手がそのホールにくると、メインキャスターの呼びかけで中継が切り替わります。

「12番のゲーリー・マッコード、そっちはどうなってる?」

というように呼びかけると、そのゲーリーがホールの隅々まで解説してくれて、実況までやってメインキャスターに返すのです。

アメリカでは、たとえば歯医者でも検査だけする医師、抜歯するだけの医師、矯正を専門にする医師と、あらゆるものが分業化されています。

それはゴルフ中継も同じで、それぞれのスペシャリストが揃っていて、試合の状況を正確に把握しながら番組が作られていくから、見る側もまるで現場にいるような臨場感を味わえるのです。日本でもJGTO(日本ゴルフツアー機構)が欧米のような専門のプロダクションを持ってくれれば、ゴルフ中継の質もグンとアップするはずです。近い将来、そういうアクションが起こることを、私は期待しています。

「ゴルフは100球打つより見てなんぼ!」(ゴルフダイジェスト新書)より

写真/三木崇徳

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