左手親指の怪我に泣かされたプレーヤーといえば、やはり丸山茂樹。PGAツアー3勝の名手も、ドライバーの練習のし過ぎから、左手親指付け根の慢性亜脱臼に苦しみ、2017年には手術に踏み切っている。丸山だけでなく、伊澤利光、田中秀道、近年ではジェイソン・デイもこの部位の怪我に泣かされた一人。松山自身、過去にこの部分の痛みに苦しめられていた。
なぜ、プロたちは左手親指を痛めるのか? 自身も御多分に洩れず左手親指の怪我を経験したというプロゴルファー・中村修は言う。
「基本的に、ゴルフクラブのフェース向きをコントロールするためには、左手親指をシャフトに合わせて伸ばす必要があります。そのため、多くのプロが左手親指をシャフトに乗せた状態で握るのですが、インパクト後、クラブがターンする過程でこの部分には非常に強い圧がかかるんです。これは、ヘッドスピードが速ければ速いほど、より大きく負荷がかかり、怪我につながりやすくなります」(中村)
これを防ぐために効果的なのが、左手親指をシャフトに乗せない「ベースボールグリップ」で握ること。そうすることで左手親指への負荷を減らすことができ、怪我のリスクを減らせるという。過去に川村昌弘が痛めた際、普段からベースボールグリップで握る時松隆光がベースボールを勧めたところ痛みがなくなった、という話もある。
「松山選手にこの部分の怪我が多いのは、それだけ高い修正能力の表れだと私は見ています。プロはダウンスウィングの最中にわずかでもズレを感じると、それを修正するような動きを無意識に入れるもの。そうすると、クラブが進もうとしている軌道と手元の進もうとする軌道にズレが生じ、指や手首を痛める要因になるんです。松山選手は、フィニッシュで片手を離したり、クラブを投げたりしたにもかかわらず、ボールはピンそばに寄る、といったシーンを多く見せてくれますが、それは修正力が高いことを表していると思います」(中村)
ほんのわずかなズレをも感じ、なおかつスウィング中に修正することが“できてしまう”ことで、普段のスウィングではかからないはずの負担が一部分に大きくかかってしまう。そのことが痛みにつながった可能性があると中村は分析する。
プロスポーツ選手に怪我は付き物とはいえ、日本のエースの怪我ともなれば、心配せずにはいられない。しっかりと治して、万全の状態での復帰を願いたい。