気分だけじゃない。実は軌道もボール位置も変化する
パターを変えるとよく入る。これは一体なぜ起こるのだろうか。
「パターの形状の特異性がその理由のひとつだと思います。たとえばドライバーやアイアンはある程度形状が決まっていますが、パターの場合、ピン型とL字型、あるいは大型マレットでは形状は大違いですよね。それだけに、振った際のフィーリングや見た目から受ける印象が大きく異なり、結果にも強く影響を及ぼすのではないでしょうか」
そう語るのは、プロゴルファーの中村修。中村によれば、プロはこのような“新車効果”を意図的に使う場合があるという。たとえば2017年の賞金女王である鈴木愛は、基本的にピン型のパターを用いるが、ストロークの軌道が悪くなって調子を崩したときには、センターシャフトなどを違いタイプのものを使い、調整を行うという。
新車に乗ると、ドライバーはそのクルマの特性を知ろうと、普段よりもアクセルやブレーキ、ハンドルの操作を慎重に行う。その結果、ドライバー自身のクセが影をひそめることになる。パターでも同じで、これがどうやら“新車効果”の正体のようだ。
ギアライターの高梨祥明も、この効果をゴルフの調子を整えるのに有効活用している一人。調子を崩した場合に備え、高梨は、“浮気用パター”をつねに用意しているのだという。
「私は普段L字型のクラシックパターを愛用していますが、腕の動きが大きくなるクラシックパターで入らなくなったときに備え、パター自体がオートマチックに動いてくれて、腕の動きが抑えられる“浮気用”を用意しています。ストロークのイメージが変化することによって、結果にも影響がありますから。ただし、エースパターからあまりにもかけ離れたものは使いません。エースに戻ってこられなくなってしまいますからね」(高梨)
「パターを変えると、自分は同じように振っているつもりでも、実は軌道や入射角、ボール位置などすべてが変わります。だからたとえばショートパットが右に外れるミスなどが、パターを替えたらピタリと止まるようなことはよくあります。パターが入らなくて悩んでいるなら変えてみるのは有効です」(中村)
最近でも、松山英樹がパターを替えて即優勝(WGCブリヂストン招待)したり、米男子下部ツアーで、友人から借りたクラシックパターを実戦投入したらいきなり50台のスコアが出た、なんていう話もある。
最近パットの調子が悪いなあ、とお悩みの方は、“新車効果”に期待するのもアリかも。ただし、ゴルフのたびにパターを取っ替え引っ替えするようだと、そもそも新車効果が発揮されない危険性もあるので、ご注意を。
写真/有原裕晶、大澤進二