筋肉でもっとも大きいパーツは太腿と言われている。世界の飛ばし屋たちは、そのその大きい筋肉をゴルフスウィングに活かすような脚の使い方をしていると、科学とデータでゴルフを分析するゴウ・タナカは言う。ゴルフのマキロイ、そして野球の大谷翔平に共通するというその脚の使い方とはどのようなものだろうか!?

脚、とくに左脚はゴルフスウィングでもっともアグレッシブに使われる。タイガー・ウッズを始め、アスレチックなスウィングをする飛ばし屋は、ほぼ例外なくこの左脚の蹴りを使っている。共通するのは、トップからインパクト(厳密にはインパクト直後まで)にかけて、曲がっていたひざを勢い良く伸ばす動きだ。

実はこの動き、ほとんどのゴルファーが少なからず使っているのだが、飛ばし屋たちのスウィングで注目すべきはその度合いと方法だ。脚の筋力をヘッドスピードアップに活かすことは理想的だが、それでミート率が落ちては意味がない。ミート率を落とさずにプラスアルファの力を得なくてはいけない。そのための方法があるのだ。

まず、スウィング中にひざを伸ばすということはスウィングの回転運動に対して、縦(上下)の力を追加するということだ。超一流はこの縦の動きをヘッドスピードアップに活かしている。

まず、大事なことは前傾姿勢の維持だ。ほとんどのプロがアドレス時に比べ、インパクト時の頭の高さは低くなっている。前傾姿勢を保つことにより、ミート率も保ちながら、脚からの力を逃すことなくより効率的に使える可能性はあがる。

ただこの方法は簡単ではない。強く地面を蹴ること(ジャンプに等しい)により上半身には起き上がろうとする力が働いてしまうからだ。鍵は、左脚の蹴る方向と左腰の使い方にある。まず左脚の蹴り方だが、上に蹴ると前傾は崩れてしまう。大事なのは左脚で左臀(でん)部後方にむけて蹴ることだ(左のお尻を後方に引くイメージ)。

これにより前傾姿勢を保ちやすくなり、軸を保ちつつ脚からのエネルギーが腰の回転を強くし、ヘッドスピードへ還元することができる。下半身もターゲットに流れすぎることなく、軸の安定を保ちながらエクストラのスピードを得ることができるのだ。

画像: 左脚を伸ばしつつ前傾角度が保てるのは、左のお尻方向に“蹴って”いるから

左脚を伸ばしつつ前傾角度が保てるのは、左のお尻方向に“蹴って”いるから

この蹴りをとくに強くうまく使っているのは、タイガー、ジャスティン・トーマス、ローリー・マキロイ、ダスティン・ジョンソン、パトリック・リード、そして世界トップのドラコンのプロたち。彼らには他にも共通点がある。

それは、左脚の蹴りが強すぎ、左の足裏がめくれるどころではなくフィニッシュに向けて、左かかとが内側にずれる、もしくは左脚全部がずれること。考えてみればこれは必然だ。激しい回転の過程で思いっきり左脚を蹴り、なおかつ左脚の位置をずらさずにフィニッシュまで回りきると、とんでもない柔軟性がない限り、そのパワーを受け止めきれずひざが悲鳴をあげてしまうからだ。

画像: 左足が激しくめくれ、つま先がターゲット方向を向くほど動いているジャスティン・トーマス

左足が激しくめくれ、つま先がターゲット方向を向くほど動いているジャスティン・トーマス

普通のプレーヤーはめくれる程度で収めているのだが、これは脳の制御によるものだろう。たいがい人間の身体は壊れないように脳が動きにリミットをかけるので、左脚の蹴りも無意識にできる範囲に制御されていると言える。

ただ、上で述べたプレーヤーたちは、左かかとを内側にずらすことにより、ひざの可動域を広げるとともに、脳のリミッターを外した状態でも怪我のリスクを抑えながら最大限の力を引き出すことに成功している。個人的な見解だが、タイガーの左膝の怪我は、この悪い癖と指摘されていたずれを矯正しようとしたことによるものだろう。

他のスポーツを見ても、この左脚のずらしはよく使われている。分かりやすいところでは野球の大谷翔平投手。大谷投手はここぞという場面でストレートを投げたときに左脚を着地直後にずらす。他にも速球派投手にこの動きはよく見られる。

画像: 大谷翔平投手も、投げ終えた後左足の位置がズレる(写真:読売新聞/アフロ)

大谷翔平投手も、投げ終えた後左足の位置がズレる(写真:読売新聞/アフロ)

私は、アマチュアゴルファーも彼らのようにここまで大きく脚力を使うべきだと言っているわけではない。この技術は非常に難しい。ただ、脚力がエネルギーという観点から見て非常に大きいのもたしかだ。ある程度使えるようになると飛距離のプラスになるのだから、理解を増やし、少しでも自分に還元するのが得策だ。

やり方は先に述べたように、インパクトにかけて左臀部後方に向けて蹴る意識を強めるだけでいいだろう。練習時間に限りのあるアマチュアにとっては、ミート率を上げるほうが飛距離の観点からは近道だが、ミート率に満足して次のステップを目指している方はやって見る価値はあるだろう。

写真/姉崎正、読売新聞/アフロ

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