ドライバーのような派手さはないが、グリーン周りで力を発揮するウェッジの存在はスコアメークに欠かせない。そして、ここにきてウェッジの“本命”ともいえるタイトリストの「ボーケイ SM7」、そして国産ウェッジの雄であるフォーティーンからは新ブランド「FHフォージドV1」、クリーブランドからは、機能性ウェッジの「RTX F-フォージドⅡ」が登場した。それぞれがどんなクラブで、どんなゴルファーに合うのか。クラブフィッターの菅谷拓プロにテストしてもらった。

操作性で選ぶかオートマチックで選ぶか

「ウェッジは、形状的に大きく変わらないため、一見どれも同じに見えるかもしれませんが、実は打ち方によって合う・合わないが強くあります。自分の打ち方に合ったウェッジを使うことで、アプローチの成功率は格段にアップしますよ」

画像: 浅草にあるインドアスタジオ「飛距離ドットデル」で菅谷拓プロが試打。計測値も交えて評価した

浅草にあるインドアスタジオ「飛距離ドットデル」で菅谷拓プロが試打。計測値も交えて評価した

そう語る菅谷プロ。実際に、今回試打した3モデルは三者三様、性能面で大きな違いがあることがわかった。

まさに万人向け。ウェッジの本命の正統進化「ボーケイ SM7」

まずは、プロアマ問わず多くのゴルファーが愛用するシリーズの最新作、タイトリスト「ボーケイSM7 Sグラインド」から。フェースを開いたり、閉じたりしやすく、プロがグリーン周りで自由自在に技術を駆使できるウェッジだ。適度にバウンスがありながら邪魔にならず、開けばバウンスが使えるのが魅力。

「言わずと知れたボーケイらしい顔つきの良さ、そしてスピン性能は言うまでもありません。ダウンブローに打ってもよし、ターフを薄く削るように打ってもよし、とまさに万能です。今回試打した他のモデルと比較しても、ネックの長さはちょうど真ん中。これは、スピンが多すぎず、少なすぎないバランスの良さをうかがわせます」(菅谷)

画像: ロフト56度、Sグラインド(バウンス角10度)を試打した

ロフト56度、Sグラインド(バウンス角10度)を試打した

ラインナップも46度から2度刻みで62度まで豊富に揃っているから、飛び系のアイアンを使ってもウェッジの距離の階段は揃えられそうだ。また、今回もっともオーソドックスな「Sグラインド」をテストしたが、このモデルには6種類のソールがラインアップされている。自分の打ち方に合ったものが選べるのも魅力と言えるだろう。

「鉄のレベルが違う!」試打者が思わずつぶやいた“FHフォージドV1”

続いては国産ウェッジの雄・フォーティーンの「FHフォージドV1」をテスト。フォーティーンといえば、プロが使う本格的なウェッジのイメージが強いが、このモデルはツアープロの多彩な技に応えるというよりは、アマチュアでもプロ仕様の打感やスピン性能を味わえるようなクラブになっているという。菅谷プロはこのクラブを「鉄のレベルが違う」という独特の表現で評価する。

「打感が軟らかいですね。鍛造(フォージド)製法であることもありますが、“鉄のレベルが違うな”と感じるほどの軟らかさです。そして、設計にも特徴があります。ネックが長く、かつフェース部分がソールからトップラインにかけて厚みが増していく形状により、重心が高く、そのため打ち出しから低く出せて抑えのきいたボールが打ちやすいんです」(菅谷)

画像: ロフト56度、バウンス12度を試打

ロフト56度、バウンス12度を試打

ウェッジのスピン量を決める要素は多々あるが、なかでも重心位置は大きく影響を及ぼすもののひとつ。高重心による高スピンはFHフォージドV1の最大の特徴といえ、ウェッジにとにかくスピンを求めたいゴルファーにとっては、最有力の選択肢となり得る。

ロフトのラインナップも41度から3度刻み、50度からは2度刻みで用意されているから、ショートアイアンからSWまでを同じ流れで揃えられるメリットがある。

パターのように振ったときに驚異的なやさしさを発揮する「RTX F-フォージドⅡ」

最後にクリーブランド「RTX F-フォージドⅡ」。見た目の特徴はネックが短く、トウ側にボリュームがあり、ワイドソール。構えると、ややグースネックながらオーソドックスな形状だ。見た目からは、やさしく、オートマチックに打てそうな印象を受ける。

「フェースの開閉を抑え、パッティングのストロークのような感覚で打つと非常にやさしくオートマチックに打てるウェッジですね。ネックを短くしてその分の重量をトウ側に配分することで、パターのトウヒールバランスと同じような効果があるようです。ワイドソールでダフリにも強く、落とし場所に真っすぐに構え、小細工せずに打てば簡単に寄せられるでしょう」(菅谷)

フェースを開閉したり、スウィング面での小細工はしにくいが、それと引き換えにパターのようにシンプルに振った場合に圧倒的にやさしいのがこのウェッジの最大の特徴。グリーン周りでザックリなどの大きなミスに悩んでいる人、開いたり閉じたりせず、つねにシンプルにアプローチしたいという人は、このウェッジが助けになる可能性は高い。

画像: ロフト56度、バウンス14度を試打

ロフト56度、バウンス14度を試打

使い手の意思に応じていかようにも使うことができるSM7はいわばスポーツカー。それに対し、極上の打感を誇り、高いスピン量を持つFHフォージドV1は高級車の風格。そして、ミスヒットへの強さと、オートマチックなやさしさのあるRTX F-フォージドⅡは四輪駆動のSUVのような印象。

見た目には大きく違わないウェッジだが、実は打つと大違い。自分がどんなアプローチをしたいのか。それに応じて適切なモデルを選ぶのが、スコアアップの近道だ。

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