女子ツアー開幕戦に唯一姉妹で出場する
女子ゴルフツアー開幕戦「ダイキンオーキッドレディス」に出場する108名の選手のうち、姉妹同時出場を果たしたのは一組だけ。松森彩夏、松森杏佳の「松森姉妹」だ。姉の彩夏は現在23歳で、妹の杏佳が22歳。ともに身長は170センチと長身で、練習ラウンドもともに行うなど仲がいい。
姉の彩夏は2016年に1勝を挙げたが、杏佳は未勝利。2017年シーズンはともに賞金シード獲得に失敗したものの、ともに年末のクオリファイングトーナメントで好結果を残し、今季前半戦の出場権を得ている。ともにクラブ契約はテーラーメイドだ。姉妹だけに、共通点を多く感じさせるふたりだ。
姉の彩夏は、やはり平昌五輪での“姉妹”の活躍に大いに刺激を受けたという。
「オリンピックを見ていて、やっぱり団体戦だと姉妹の力って強いんだなと感じました。でも、ゴルフは個人競技ですから、ちょっと違うかもしれません。もちろん、お互い切磋琢磨できるのはいいことだと思いますし、もしダブルス戦があったら、姉妹の強さを発揮できるかもしれません(笑)」(姉・彩夏)
高木姉妹は3人1組で滑るチームパシュート、吉田姉妹はこれまた4人1組で力を合わせてプレーするカーリングでのメダル獲得だったが、ゴルフは個人競技。選手とキャディの関係でない限り、コースの中で力を合わせることはできない。しかし、そうは言っても姉妹ならではの良さも、姉は実感している。
「好きな食べ物が同じなので、食事は一緒にできるし、楽しく過ごせます。性格は妹は喜怒哀楽が少ない平坦な感じで、私はいつもあーだこーだと言うほうなんですが、やっぱり落ち着きますから」(姉・彩夏)
一方の妹・杏佳は、姉とともにツアーに参戦するメリットをもう少し具体的に実感しているようだ。
「同じ競技をやっているので、練習を一緒にしたり、スマホで(スウィングを)写してもらったりしてもらえるので助かっています。姉の良いことも悪いことも見ながら育ってきているので、自分に生かせることはあると思います。姉を見て育ったから、性格も姉と反対で落ち着いた? 感じになったのかな(笑)」
姉妹のコーチでもあるプロゴルファー・江連忠は「兄弟、あるいは姉妹で両方とも結果を出すっていうのは本当に大変なこと」と言いながらも、身近な存在である松森姉妹にエールを送る。
「ゴルフで言えば、ジャンボさんのところ(尾崎将司・健夫・直道の三兄弟)くらい。女子では堀姉妹(奈津佳・琴音)、福嶋姉妹(晃子、浩子)ですが、それにしても妹の浩子さんが優勝するまでには長い時間がかかりました。松森姉妹は僕のアカデミーで、(諸見里)しのぶ、(上田)桃子、(片山)晋呉といった選手たちと一緒にいましたから、彩夏(姉)も長女とはいえ周りを見て育ってきたと思います。そのため練習量や質といった面で、勝つためにはどれだけのものが必要かわかっていますから、期待したいですね」(江連)
スピードスケートの新競技、マススタートで初代金メダリストに輝いた高木姉妹の姉・菜那は、「妹に勝ちたい」という思いがモチベーションにつながったという。また、カーリングの吉田姉妹は、ソチ五輪では代表の座を争って姉妹が別チームに分かれて争い、片方が落選したという過去があるという。
姉妹ならではの特別なライバル関係と、姉妹だからこそのこれまた特別な協力関係。それらを力に変えて、トーナメントで優勝争いを繰り広げる「松森姉妹」の姿を楽しみに待ちたい。
写真/三木崇徳