トップアマとして数々のタイトルを手にし、49歳でプロに転向。現在はシニアツアーで活躍中の田村尚之プロは、なぜ曲がらず飛ぶのか? どうやらその理由のひとつはグリップにあるみたいだが……? 自身の著書「田村流『あきらめる』ゴルフ」から飛ばせるグリップの握り方をご紹介しよう。

グリップは「引く」指でしっかり握る

「グリップはゆるく握りましょう」とよく言われますが、グリップの強さは、感覚の話なので、とても難しいですよね。握力は30キロで握っています、と数字でお伝えできればいいのですが。

実を言うと、私はいままでグリップの強さを考えたことがありません。ただ言えるのは、左右の手がどちらも握力が40キロに満たないので、絶対それ以上の力では握っていない、ということでしょうか。ですかあら、私はあまりグリップを強くは握っていない、というか、握れない、ということになります。

でも、考えると不思議なんですよねえ。私のグローブのサイズは20センチで特注なんですが、手の大きい人は26センチとかでしょ。こんなに個々で違いがあるのに、グリップの太さは大体同じ。グリップが当たっている手の部分は、かなり違っているはずなのですが......。

ちなみに、私はグリップを強い力では握れないと言いましたが、自分としてはそこそこ強い力で握っているような気もします。どうせ「ここ一番!」の場面では力が入ってしまうので、それなら普段からそれなりに握っておこうとも思うからです。

それでも昔は、なんとか力が入らないようにいろいろトライしました。でも、割と早い段階であきらめました。というのは、人間の性格、本性は、ちょっとやそっとでは変えられないことがわかったからです。

では、どうしたか?

脳が意識しても、それがショットに影響しにくい状態を作っておくことを考えるようにしたのです。「握りの強弱」と言うより、「手のどの部分に力を入れているか」が重要だと気付いたのです。

私の場合、グリップは左右とも中指から小指に力を入れて握っています。人差し指と親指は遊ばせておいて、ほとんど力は入れていない感じです。

なぜかと言うと、親指と人差し指は「押す」指で、中指から小指は「引く」指だからです。スマートフォンなどのボタンは親指や人差し指で「押す」人が多く、綱引きの綱は中指から小指で「引く」人が多いですよね。

画像: 「ヘッド」とかかと体重の「体」との引っ張り合いをするために、両手の「引く」指でグリップをしっかり握る

「ヘッド」とかかと体重の「体」との引っ張り合いをするために、両手の「引く」指でグリップをしっかり握る

私は、スウィング中に遠心力を最大限に利用したいので、インパクト付近で体の中心から離れていこうとする「ヘッド」と、かかと体重の「体」とで引っ張り合いをします。そのため、グリップも左右とも中指から小指に力を入れているというわけです。

押す指に力が入っていると、「押す=手首を返す」動きをしようとしてしまいます。この手首を返す動きは、一見必要なもののように感じますが、遠心力で走っているヘッドにブレーキをかけることになってしまいます。遠心力を最大限に利用するには、できるだけ飛球線方向に真っすぐな軌道で、なおかつフェース面が上を向くような感じでフォローを出すのがポイントだからです。

また、引く指は頭で考えた意識が伝わりにくいため、パッティングでもショットでも、ここ一番のプレッシャーがかかった場面でヘッドが変な動きをしにくいということや、パッティングでの距離感が合わせやすい、という利点があるんですよ。

「田村流『あきらめる』ゴルフ」(ゴルフダイジェスト社)より

写真/姉崎正

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