バックスウィングの反動で飛距離アップ
みんなのゴルフダイジェスト編集部(以下、編集部):ドライバーで280ヤードというと、女子のツアープロよりもずっと飛んでいることになります。飛距離アップのポイントを教えてください。
林:飛ばすにはヘッドスピードを上げなくてはいけませんが、師匠である浦大輔プロにバックスウィングのスピードを上げるように教えてもらいました。バックスウィングを“速く・大きく”上げて、その反動を使って振り下ろしていく。そうするとヘッドスピードがグンと上がったんです。
編集部:スウィングは“ゆったり・大きく・間を取って”と、一般的には言われますが?
林:う~ん、よく「フォローでヘッドを加速させなさい」というレッスンがありますし、かつて私もそう教えられていましたが、それじゃあどうガンバっても飛びませんでした。ごく単純に考えて、インパクトの後にヘッドが走っても、ボールに大きなエネルギーを伝えられないと思いませんか?
バックスウィングを速くすることでトップが大きく深くなって、その反動で切り返してダウンスウィングをする。そしてボールよりも手前、右足の前くらいでヘッドがイチバン走るように振ったら、目に見えて飛ぶようになりました。
編集部:そういうことですか。でも実際にドライバーのスウィングを見ると、そんなに速く振り上げているようには見えませんが……。
林:そうなんです、そこがなかなか伝わりづらいところで……。一緒に回っている人たちにも「クラブをゆっくり大きく上げてるんですね」って言われますが、私としてはメッチャ速く上げてるしメッチャ速く下ろしてるんです、ホントに(笑)。
体の動きだけを見るとゆっくりかもしれませんが、ヘッドの動きを見るとけっこう速いと思います。テレビや映像で海外のトッププロを見ると、バックスウィングも“ゆったり”上げてるように感じますが、それは外国人選手たちの身長が高くて手足が長いから。きっと本人たちは速く振っていると思いますよ。
編集部:ともかく、今はクラブを振り上げる力も利用してヘッドスピードを上げている。それで飛ばせるようになったんですね。
林:そういうことです。たとえば“デコピン”をするときも、指をグッと引いた反動で、戻るスピードが上がって鋭く強くヒットできます。ゴルフのスウィングもそうで、バックスウィングのスピードが上がるほど反動が強くなって、より速く振り下ろせるようになる。「バックスウィング」って言うように、振り上げるのも“スウィング”のうちなんだと思います。そういう意味では、体を“硬く”使えるようになったのが大きいかな。
編集部:体の肩甲骨周りや股関節などが柔らかいほうが、スウィングアークが大きくなって飛ぶんじゃないんですか?
林:そういう体の柔らかさよりも、硬いモノが曲がって戻ろうとするときに生じる瞬発力を生かしたほうが飛びます。作用・反作用の法則ですね。クラブを速く振り上げてトップで体を“締める”ことで、反動が強くなってヘッドスピードが上がり、ボールをハードヒットできるようになったんです。
編集部:体のどこかを“締める”ことで飛ばせるようになったんですね。
林:はい。それに伴ってドライバーのシャフトも、飛ばなかったころとはスペックが一変しました。以前は“重い・軟らかい”だったのが、今は“軽い・硬い”です。フレックスは「R」や「SR」だったのを「SX」に硬くしたし、ホントに飛ばすときは「40グラム台・TX」のシャフトも考えています。キックポイントにしても、以前は先調子系だったのが、今では手元調子系のシャフトを使うようになりました。
編集部:女性の体力でそんなにしっかりしたシャフトを振れるんですか?
林:それも先ほどの話と同じで、硬いモノが曲がって戻ろうとするときって「パチン!」と、小さく鋭く弾きますよね。あの瞬間的なスピードを使ってヘッドを走らせるんです。私の体力で振れる、マックスで硬いシャフトということ。以前までは、軟らかいシャフトを「ボヨ~ン」と大きくしならせようとしていましたが、それでは飛びませんでした。たとえるなら、平らなモノに対して、コンニャクを曲げて打つのと割り箸を曲げて打つのでは、割り箸のほうが「パチン!」と鋭く弾いて強く叩けますよね。
編集部:体を“硬く”使ってスウィングスピードを上げたのと同じ原理ですね。
林:そうです。とにかく、それまでの先入観やセオリーはいったん捨てて、自分の体力やスウィングに合っていて、飛ばすために最適なクラブを使うことで、大きなエネルギーをムダなくボールに伝えられるようになったんです!
写真/岡沢裕行