契約金はありがたいが、クラブ変更がアダとなることも
さて、一言で契約金と言っても、プロゴルファーの場合さまざまなものがあります。まずは、クラブ契約。クラブメーカーが、自社のクラブを使ってもらう代わりに、プロに契約金を支払うというものです。
たとえば今年1月、ダスティン・ジョンソンがハワイの試合で433ヤードのパー4であわやホールインワンというスーパーショットを放ちました。その手に握られていたのは、テーラーメイドの「M4」ドライバーでした。その宣伝効果は凄まじく、M4は現在大ヒットとなっていると言います。
ゴルフ業界では、プロ使用の訴求効果は高く、そのためトップ選手は10年単位で100億円単位とも噂される、高額のクラブ契約を結ぶ場合が多々あるのです。その金額はまちまちで、14本すべて使うのか、ウェッジとパターを除いた10本とか、ドライバーやパターなど、特定の番手を含めた何本、なんていうこともあります。「ドライバーだけ」という契約も存在します。
一方、プロの間では「クラブ契約は怖い」という認識が実はあったりもします。たとえば、1000万円でクラブ総合契約を結んだとします。それで成績が出れば最高です。賞金も稼いで、契約金ももらえて、メーカーも喜んで、みんなハッピー。
問題は、稼げなかった場合です。大きな声では言えませんが、クラブ契約を変えたのをきっかけに調子を崩す選手は少なくありません。あのロリー・マキロイでさえ、その後ナイキのクラブで大活躍することになりましたが、当初は思うように結果が出ず、クラブ契約変更の影響を取りざたされたものです。
クラブの本数が多いほど、さらにボールも含めればさらに契約金は上がります。一方でそれは、契約した本数分だけ使い慣れたギアを手放すということ。当然のこととして、リスクは高まります。
とにもかくにも、シードを失うと契約を切られる、あるいは契約金を下げられるということは大いにあります。シードを失い、契約金を失う、あるいは下げられ、税金だけがドンとくるという怖さがあるわけです。
クラブ契約を結ぶメリットは、若手のプロによりあります。ある程度まとまった金額を受け取ることで、フル参戦すれば年間1000万円はかかるツアーを転戦資金とすることができますし、会場ではギアの調整などもしてもらえます。
いずれにせよ、お金がもらえるのであればそれは恵まれているとも言えます。モニター契約といって、クラブの提供のみで金銭が発生しない契約もあるからです。むしろ、そちらのほうが多いくらい。
自分の愛用しているクラブメーカーと金銭契約が結べれば、それが一番ありがたいけれど、そんなうまい話はそうそうありません。げにクラブ契約は悩ましきかな。それが、多くのツアープロの実感ではないでしょうか。
写真:姉崎正、有原裕晶