「思わず応援したくなる」二人のプロたち
相変わらず女子プロ人気は高い。イ・ボミ、キム・ハヌルはもとより伸び盛りの若手が雑誌の表紙を飾ることもしばしば。そんななか開幕した国内女子ツアー初戦で諸見里しのぶが久々にリーダーボードの上位を賑わした。天才少女とうたわれた彼女こそ私にとって思わず応援したくなる女子プロだ。
地元沖縄、しかも所属先が主催するダイキンオーキッドレディスで諸見里は3位タイに食い込んだ。2015年のTポイントレディストーナメント以来のトップ10入りである。
天才少女として名を馳せ宮里藍と同じ年に米ツアーにも挑戦。2009年には国内でメジャー2勝を含む6勝を挙げ賞金ランク2位に入りもした。ところが5年ほど前から調子を落とし一昨年は出場した試合すべてで予選落ちを喫した。QTから出場権を得た昨シーズンも23試合に出て予選通過はわずか3試合にとどまった。
練習場で打つ球は全盛期と変わらないし、ゴルフの技術はいまどきの若手よりずっとある。それなのに本番になるとスコアが作れない。なぜ?
「肋骨だけ骨密度が80歳」という奇病にかかり痛みを抱えながらのプレーを余儀なくされたのが大きな理由。練習ができずイップスの症状も出て一時長期休養をとったことも。
精神的なものも大きいだろう。元来やさしい性格で自分が自分がと前に出るタイプではない。上位で戦う選手たちはたとえやさしそうな顔をしていても肝が座っているしド根性がある。諸見里にはそれがない、いやないように見える。
米ツアーに初参戦したころ当時のコーチ・江連忠氏に人前で怒られ、目を真っ赤に腫らしながらひたすら球を打ち続けた諸見里の姿を昨日のように思い出す。
生真面目で健気。「勝てないのは優勝スピーチを練習していなかったからだ」と思い立って、ホテルの部屋でひとり練習していた彼女が久々に上位争いをした。大会ホステスという大役にプレッシャーもあっただろうが「楽しかった。これからの自信につながった」と明るく語ったのがうれしかった。
そしてもうひとり、同じく3位タイに入った畑岡奈紗も応援したいひとり。昨年米ツアーで惨敗し日本に戻ってきてから国内で2勝を挙げ、再挑戦した米Qスクールをトップ通過し今季も主戦場は米ツアーだ。
しかしアメリカでの環境は厳しいという。まだ19歳のため免許はなく、たとえあったとしても年齢的にレンタカーを借りるには膨大な保険料が必要。仮住まいのホテルから練習をしに行くにも足がないからままならない。目下、車の運転ができる通訳やアテンドする人を探しているようだが、体制が整うまではまだ時間がかかりそう。だがいまの苦労がいずれ報われる日はきっとくるはず。
あなたにとって思わず応援したくなるプロは誰ですか?
写真/岡沢裕行