ゴルフのプロ、プロゴルファー。彼らに付きものなのが、身につけるモノなどに企業ロゴを掲示するスポンサー契約だ。なかでも目立つものといえばキャップやウェア。そこにどんなロゴが入るかには、当たり前だが裏話がいろいろある。プロならではのおカネの話を、プロゴルファー・中井学がわかりやすく解説。

一番重要なのは「キャップ正面」

新年度がはじまり、社会人なら就職、転職……といった転機を迎えた人も少なくないでしょう。我々プロゴルファーにとっても、4月1日はちょっと特別な日だったりします。なぜなら、スポンサー契約の中に、「3月31日まで」、というものが多いからです。

使用クラブ契約、スポンサー契約、CM出演契約など、契約にはいろいろなものがありますが、見られてナンボのプロゴルファーの場合、ウェアやキャップなどにロゴを掲示するスポンサー契約は、とくに特徴的ではないかと思います。

ロゴが入る位置には、ある程度「定型」があります。キャップの正面。キャップの両サイド、つば。ウエアの右袖、左袖、胸、えり。この計8カ所が基本です。

なかでも重要なのがキャップ正面。ここには、所属先というメインの契約先のロゴ、あるいはクラブ使用契約を交わしているメーカーのロゴがはいる場合が多いです。とくに日本の場合、クラブ契約の中に、使用本数などとともにキャップ正面にロゴを掲示する権利も含まれている場合が多いです。

画像: 世界ランク1位のダスティン・ジョンソンはクラブ契約も結ぶテーラーメイド、ツアー屈指の人気者、フィル・ミケルソンはクラブメーカーではなく、世界4大会計事務所のひとつ「KPMG」が“キャップ正面”

世界ランク1位のダスティン・ジョンソンはクラブ契約も結ぶテーラーメイド、ツアー屈指の人気者、フィル・ミケルソンはクラブメーカーではなく、世界4大会計事務所のひとつ「KPMG」が“キャップ正面”

日本の場合「クラブを使っているから」「長く契約してもらっているから」という、ある種“義理”でキャップ正面にロゴが来る場合があるのですが、海外の場合、キャップ正面のスポンサーはシンプルに「一番お金をもらっているところ=メインスポンサー」になります。

お隣の韓国では、キャップの正面にはクラブメーカーではなく、一般企業のロゴを入れるのがステータスになっていると言います。

「知らない企業」のロゴが入っているのはなんで?

さて、キャップ正面に次いで重要なのが、「体の右側」です。理由はシンプル、ゴルフの場合、ロゴがテレビに映ったり、写真に映りやすいのは圧倒的にフィニッシュ。そして、フィニッシュで映るのは主に体の右サイド。ゆえに、体の右側のほうが人気があり、金額も高く、それでいて早く決まる場合が多いのです。

ただしこれには例外もあります。たとえばレッスンプロの場合、意外と正面のロゴが重要なんです。これは、雑誌の誌面などでは、読者と正対するようなカタチで写真が掲載されることが多いから。このように、見られ方が違うと、ロゴの位置も変わったりします。

さて、最後に、みなさんはテレビに映る結構な有名プロでも、一般には名の知られていない企業のロゴをつけているのを見たことがないでしょうか? その理由は、どのようにしてスポンサーが決まるかと密接に関わりがあります。

もちろん、所属事務所や広告代理店を通じて、というケースもありますが、意外と多いのが、トーナメント開催週に、主催者が関連企業や取引先の重役などを集めて開催するプロアマ戦で決まるケース。中小企業の社長さんが一緒に回ったプロを気に入って、スポンサー契約が決まるというパターンです。

大企業の場合、プロゴルファーをスポンサードするのには、様々な部署、様々な人の承認を経る必要がありますが、中小企業の場合、社長の鶴の一声で決まる場合が多々あるんだと思います。実際、私自身もラウンドレッスンを気に入っていただいて、スポンサー契約をしてもらったという経験があります。

画像: 中井学自身は2018年2月に開設されたゴルフ動画を手掛ける「UUUM GOLF」と所属契約している

中井学自身は2018年2月に開設されたゴルフ動画を手掛ける「UUUM GOLF」と所属契約している

さて、プロゴルファーにとって、スポンサー契約とはいわば活動資金。それがあることによって、懐の心配をすることなく、ツアーに専念することができたり、またツアーに出るために挑戦することができたりします。予選落ちしたら賞金ゼロ、経費は全部持ち出し。そんな厳しいプロの世界だからこそ、活動を支えてくれるスポンサー契約は、ありがたいものなんです。

写真/岡沢裕行

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