国内男子ツアーは「320ヤード」短い!?
まずは、国内男子ツアーと世界のメジャー大会のヤーデージ(18ホールの総距離)を比較してみよう。昨年の男子ツアー開催コースの平均ヤーデージは7158.6ヤード。それに対してメジャー大会の平均ヤーデージは7478ヤードで、その差は約320ヤードある。
それに対し、設定された規定打数(パー)はメジャーの平均71.25に対して男子ツアーは71.28とほぼ変わらない。飛距離だけで比較した場合、320ヤードと短いパー4ひとつ分ほども短いのに、パー設定は同じということになる。
せっかく飛ばせる選手でも、飛ばす意味がない(リスクに対するリターンがない)ため、ロングアイアンでティショットする。そんな話も聞かれるように、距離が短いことは難易度だけでなく、プロの戦略にも影響を与える。
しかし一方で、現実的には国内のコースでそれだけの長さを設定“できる”コースの存在自体が少ないのもの大きな壁となっている。そこで登場したのが、8000ヤード超のセッティングを実現できる今回のザ・ロイヤルGCというわけだ。
メジャーで活躍できる選手の輩出を念頭にセッティング
この試合に関わるキーマンたちは、今回の8000ヤードを超えるセッティングにどんな意図を込めているのか。まず話を聞いたJGTO(日本ゴルフツアー機構)の藤崎茂夫ツアーディレクターは、「コースがプレーヤーを育てる」と言い、こう続けてくれた。
「長いコース、テクニカルなコースなど、ツアーには年間を通して様々なコースがあっていいと考えています。その中で今回の(ミズノオープンの)コースのテーマは距離にあります。アンジュレーションの強いグリーンに向かってロングショットを多用すること。4日間を通して忍耐力、体力を必要とされるセッティングになっています。もちろん世界のメジャー大会で活躍できる選手を輩出することも念頭にセッティングしています」
バーディ合戦も面白い。しかし、海外メジャーではバーティ合戦よりも我慢比べの展開となるほうが多い。それを見越したセッティングというわけだ。
実際にプレーする選手の側はどう思っているのだろうか。2015年のミズノオープン優勝者であり、22年連続で賞金シードを保持する大ベテラン・手嶋多一プロは言う。
「長く試合に出場させていただいていますが、こういうコースでの試合は初めて。距離が長いので飛ばし屋が有利ではありますが、このコースはそれだけでは勝てないと思います。グリーンも硬く速い、そしてアンジュレーションもかなり強い。ピンを狙うショットで落とし場所がほんの少しズレただけで、ピンから離れて行くこともありますし、グリーンを外せば難しいアプローチが残ることにもなると思います。その繰り返しの中でいかに忍耐強くプレーを続けられるか。世界のメジャー大会につながるセッティングになっていると思います」(手嶋)
やはり出てくるのは“忍耐”という言葉、そしてメジャーに通じるセッティングということだ。同じキーワードは、コースを所有するオハヨー乳業所属で、コース改修にも大きく関わったプロゴルファー・鈴木則夫の口からも聞かれた。
「ゴルフの醍醐味は、飛距離、正確性、戦略この三つ。パー3以外の14ホールのうち10ホールはドライバーを使うセッティングにすることで、ロングショットの正確さ、アプローチやパッティングの技術、14本のクラブすべての技量が問われるコースを目指しました。ひとえにこのコースで心技体を鍛えて世界のメジャーや米ツアーで活躍する選手に育って欲しいという思いからです」(鈴木)
コースの難易度は飛距離だけでは決められないし、短いからやさしいということでもない。日本独特の林間コースや丘陵コースのレイアウトも難易度は高いはず。だが世界のメジャー大会のセッティングを考えると、また違った難しさを要求されているのも事実。
実際、ザ・ロイヤルGCはただ長いだけでなく、池やバンカーの配置、グリーンの硬さ・速さといった点も海外メジャーばりのセッティングとなっている。そこでのトーナメント開催は、男子ツアーにとって変化をもたらすひとつのきっかけとなり得る。
上位に入ると海外メジャーである全英オープンに出場できるミズノオープン。難コースを制し、世界に羽ばたくのはどんな選手になるのか。5月末の開催が、今から楽しみだ。