「飛距離?飛んでも200ヤードくらいじゃないかな」
上原のキャディに番手ごとの彼女の飛距離を尋ねたときのことである。
「ドライバー? うん?」とキャディは考え込んだ。「220ヤードくらい?」と聞くと「いや」と即座に否定。「それはない。195ヤードか飛んでも200ヤードを超えるくらいじゃないかな」という答えが返ってきた。
確か米ツアーデビュー2年目のシーズン。自ら「サンドウェッジは(ツアーで)私が一番上手い」というほどショートゲームには自信を持っていたが、下手をするとティショットで70、80ヤード置いていかれるなか、米ツアーでシードを守り続けているのだからあっぱれというしかない。
宮里藍の引退試合として話題になった昨年のエビアン選手権では最終日最終組も経験した。荒天のため54ホールに短縮されたが、首位と1打差で最終ラウンドをスタートさせ中盤まで上位をキープ。ところが13番でボギー、14番でダブルボギーを叩いて優勝争いから脱落。結果10位タイに終わっている。
「いま思うとあれはすごく良い経験でした。(今日の好スタートも)その経験が生きていると思う。あのときは後半アドレナリンが出て球が思った以上に飛んでしまった。緊張するなかどのようにメンタルをコントロールすべきかを学ぶ良い機会だったと思います」(上原)
外国人記者に「メジャーで勝つ自信が深まった?」と尋ねられた上原は「緊張するけれど自信もあります。緊張と自信が良い意味で合わさっているような感じ。明日からも頑張りたい」と笑顔を見せた。
実は昨年の夏からリディア・コーの新コーチとして注目されているテッド・オーに師事するようになった。
「ショット、アプローチ、パットすべてを指導してもらっています」(上原)
オーといえばアマチュア時代のタイガー・ウッズのライバルとして有名。プロ転向後は不遇でツアーでは活躍できずマイナーツアーのドサ回りを経験したが、天国と地獄を味わった分、教え子たちの心に寄り添う指導ができると評判だ。
今週は信頼するコーチが隣にいる。心強い援軍を得て上原は“世界のアヤコ”こと岡本綾子さえ成し得なかったメジャー獲りに挑戦する。
写真/大澤進二