1日プレーをともにした仲間には、プレー後に一言挨拶を交わすのは常識。そんなとき、「アイコンタクトして挨拶することです」というのはゴルフマナー研究家の鈴木康之。著書「ゴルファーのスピリット」から明日使えるゴルフマナーをご紹介。

挨拶とは眼差しである

あるトーナメント会場で藤井かすみプロがラウンドを終えてサイン攻めに遭っているところを見ました。ギャラリーの列はなんと2、30人になっていましたか。彼女はサインしたものを渡すとき、1人1人に目を向けて「ありがとう」を言っていました。当日の彼女の成績は中の上でしたが、私の目に映った彼女の仕事ぶりは上の上。この日から私も藤井プロのファンになりました。

言葉もなしにサインをしてやる風のプロが多く、誰のおかげでゴルフを仕事にしておれるのか、その心ができている日本のプロは悲しいかな多くありません。欧米のプロたちは子どものときからアイコンタクトの社交習慣が身についていますし、PGAツアーの教育指導も確かですから、きっちり人の目を見て大事なひと言「サンキュー」とともにサインを返します。

日本人は視線をぶつけるのは苦手です。相手の目を少し外して見ると穏やかでよいという優柔な礼法を先祖から受け継いでいるからでしょうが、しかし時と場合によって優柔はいい加減と同じものになります。

ゴルフは英国に生まれ育ったゲームです。英国式にきっちり挨拶するほど様式美としてかっこよく決まります。ゲームの前後に、脱帽、アイコンタクト、握手をしてひと言。この4つが紳士淑女の挨拶のワンセットです。この4つのうち、脱帽は庇に手をやるポーズでもすむでしょう。言葉は独特の日本語「どうも」でも通じます。握手が慣れないなら会釈でもいいでしょう。しかし、アイコンタクトは必須です。これがないとあとの3つをちゃんとしても挨拶としてはいい加減なものになります。

画像: アイコンタクトをし挨拶をすることがゴルファー同士のマナーだ

アイコンタクトをし挨拶をすることがゴルファー同士のマナーだ

テレビ前のギャラリー席で「もはや日米プロトーナメントの違いは、スウィングでも飛距離でもなくなったな」と会話がありました。

「あとは背丈の差か」

「そいつは当分追いつかない。違うのは、ゲーム後の挨拶のかっこよさだ」

「あちらのプロは、なんでかっこいいんだ」

「帽子を取って、きっちりアイコンタクトして握手するからさ。調子が出ずじまいで不機嫌なはずのプロも、あのときは我に返って眼差しが優しくなる」

年齢を重ねたゴルフ倶楽部の中で、高齢のメンバー同士がお互い丸くなった背を伸ばして、握手し目を見合ったまま話し込んでいるような光景を見かけると、一幅のゴルフ絵のように見てとれてしまいます。あの眼差しが交わし合っているもの、あれがゴルフのフェローシップです。

「ゴルファーのスピリット」(ゴルフダイジェスト新書)より抜粋

写真/増田保雄

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