ネックの形状やシャフトの刺さっている位置でパターを選んでいるゴルファーはいないだろうか? 実はこれ、大きな間違い。クラブの“眺め方”を変えてみると、そのパターの性格が現れるというのはギアライターの高梨祥明。パターの特性を知る“眺め方”を教えてもらおう。

重心アングルを眺めてみると、パターの性格が見えてくる

今月からは、気が向いたときにゴルフクラブの眺め方について書いてみたいと思います。第一回目(?)は、パターの眺め方。たとえば、センターシャフトのパター、皆さんならどういう眺め方をするでしょうか。

まずは、何といっても構えた感じ、ですよね。これでしっくりこないヤツは無理して使うことはないでしょう。次は気になる、パターの性格をチェック。これは指先などでシャフトのバランスポイントを見つけ、トゥの傾きを“見る”ことで、だいたいの特性を見極めてしまおうということです。同じセンターシャフト(っぽい)モデルでも、この指先でバランスをとった時のトゥの傾き(重心アングル)が結構違うのです。

例えば一番左のいわゆるブルズ・アイ型(T字)モデルのトウ先は、ほぼ真下に向いています。真ん中の四角いフランジモデルは、トウは左を指しています。センターシャフトのフェースバランスタイプですね。そして右はその中間。センターシャフトですが、トウはやや下がるクオーター・ハングと呼ばれる重心アングルを持っています。

画像: 左から『ブリストル・デッドアイ』(T字型)、『PINGシグマG キンロックC』(センターシャフト)、『オデッセイO-WORKS 5CS』(センターシャフト)

左から『ブリストル・デッドアイ』(T字型)、『PINGシグマG キンロックC』(センターシャフト)、『オデッセイO-WORKS 5CS』(センターシャフト)

たまにセンターシャフトは“まっすぐにヘッドを動かしやすい”という話を聞くことがありますが、このようにフェースの開閉に大きく影響する重心アングルを眺めただけで、 “センターシャフトはまっすぐに”説は、一概に言えないことがわかります。角度が付かないブルズ・アイ型は、フェース開閉をして、しっかりヒットすることで距離感が合うパターなのですから。

同じB型ソールでも、ネックの位置と形で重心アングルが違う

パターヘッドのバリエーションとは、このバランスをとった時のトウの傾きのバリエーションなのではないかと、時々思うことがあります。そういうことはたいてい、古めのPING(ピン)パターをあれこれ眺めている時に、ハッ! と気づかされるのです。これを一人で“カーステンの教え”と呼んでいます(カーステンとは、ゴルフメーカーのPINGを創設した偉大なエンジニア、カーステン・ソルハイム氏のことです)。

PINGパターのクラシックモデルには、パターヘッドの形は同じで、ネックの形状や位置を変えたバリエーションを持つものがあります。写真の「B60シリーズ」もその一つです。

画像: 左からPING『B60』(センター寄り/クランクネック)、『B61』(ヒール/クランクネック)、『B62』(ヒール/スラントネック)

左からPING『B60』(センター寄り/クランクネック)、『B61』(ヒール/クランクネック)、『B62』(ヒール/スラントネック)

ご覧の通り、同じソールがB型になったモデルなのに、トウの傾き、フェースの上向き加減が違っていますよね。これがネックの位置とオフセットの調整によって意図してコントロールされた、重心アングルのフローです。

カーステンは、ミスにやさしいパターヘッドを作るだけでなく、プレーヤーが振りやすいと感じるフェースの開閉パターンまでを一堂に揃えて、フィッティング販売を基本に展開していたのですね。ちなみに今でも、PINGパターのシャフトには“アーク”、“セミアーク”、“ストレート”と、フェース開閉の大きさを示すシールが貼ってあります。

何気なくゴルフ道具を眺めている時に、ふとそういうことに気づくとなんだか愉しくなってきます。カーステン氏がもしご存命なら、我が邪推をぶつけて“おまえは全然わかってないね”、と叱られてみたい。そんなふうに思います(笑)。

写真/富士渓和春

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