米ツアーで戦っていた頃の石川は苦しそうだった。日本で大勢のファンに囲まれ黄色い声援を浴びていた頃の輝きは消え、線の細さばかりが目立っていた。
本人も認めているが本来石川遼という男は注目され、騒がれ、もみくちゃにされながらプレーすることで力を発揮するタイプなのだ。ギャラリーのいない裏街道ではモチベーションが上がるわけがない。
結果、思うようなプレーができずに自信をなくし、戦う場所を失って日本に戻ってきた。同じ年の松山英樹が世界で戦っているなかでの米ツアー撤退に本人のプライドは深く傷ついたはず。
だが持ち前の切り替えの早さで石川はかつての輝きを取り戻し始めている。最年少の選手会長を任されツアーを盛り上げるためのさまざまなアイディアをひねり出しながら戦うことに大きな価値を見出しているようだ。
東建開幕前週に行われた2つのオープン競技は間に日を置かず4日間連続で行われた。まず千葉オープン(2日間競技)で接戦を制しトロフィーを掲げると、夜遅い新幹線で岐阜に移動。翌日にはティグランドに立つという強行スケジュールなかで2連勝したのだからあっぱれ。
どんな小さな試合でも勝つことが大事なのだ。実戦で結果を出すことが自信につながるからだ。
かつてセベ・バレステロスがスランプに陥ったとき「すべては自信なんだ。自信さえ戻れば絶対にカムバックできる」と語っていた。だが20代でピークを迎えた彼が一度失った自信はついに戻ることはなかった。
しかし石川は違う。米ツアーで戦ってきた自負もあるだろう。あれだけ厳しい環境に耐えてきたのだからちょっとやそっとではへこたれないぞ、と。前哨戦での2連勝も大きい。再び自信という鎧を身につけた彼のオーラは日毎に輝きを増している。
海外でプレーするのが合うタイプの選手もいれば国内でプレーする方が実力を発揮するタイプの選手もいる。注目を浴びたい、カッコいいことがしたい、と思うタイプの石川は間違いなく後者だ。
最近は大谷翔平ばかりが取り上げられているが、16歳のころの石川はいまの大谷ばりに話題を振りまいてくれていた。“ゴルフ界のスーパースターここにあり”というところをもう1度見せつけてもらいたい。