「アマチュアは『ゴルフスウィング』というスポーツをやっているかのようだ」
マクロウ氏はPGAカナダのメンバー。マスターズ王者であるマイク・ウィアーとも親交があり、PGAツアーの選手とも契約する弾道解析の第一人者の一人だ。
言うまでもなく、弾道解析器はもはやツアー選手の間で利用することが常識となりつつある。クラブがどのように動き、その結果どのような弾道が出たのか。そこを分析することによって、より良い打球条件になるようにヘッドの動きをチューニングする。
いいスウィングの結果、いいボールが打てるという時代は終わりつつあり、弾道という結果を元に、スウィングを微調整するという時代に突入しつつある。ただ、だからといって解析器は万能ではないと、マクロウ氏は言う。
「弾道解析器は『どうなっていたか』は教えてくれますが、『どうすればいいか』は教えてくれません。そしてつい、(計測の結果得られる)テクニカルな数値にばかり目がいってしまうのも問題です。解析器が何を示してくれるか。そのデータをどう使うか、そこが重要なんです」(マクロウ)
当たり前の話だが、弾道解析器があればゴルファーの抱える問題が即解決するわけではない。解析器が行うのはデータの収集のみ。そのデータをどう活用するかは、人の手に委ねられているわけだ。となれば気になるのは、世界のトップであるPGAツアーの選手たちが、解析器をどう利用しているかだ。
「私の契約しているPGAツアーの選手は、毎週月曜日に各番手のキャリー飛距離を計測しています。体のコンディション、気温、気圧によって普段の距離とどう違うのかを確認するためです。それを(その週の)コースマネジメント、ゲームプランに役立てるわけです。そして、その次に大切なのが、どれくらいの角度で落下するかというランディングアングル(降下角)を見ることです」(マクロウ)
打ち出し角という言葉は一般的だが、降下角という言葉はあまり聞き慣れない。しかし、タフなセッティングで戦うトップ選手にとっては、この降下角こそが生命線になるのだとマクロウ氏は言う。
「グリーンのセッティングやピンポジションが厳しいPGAツアーでは、落ちてからどれくらい転がるかが重要になります。なので、グリーンに対して打つショットにおいて、選手たちは50度くらいの降下角を目指しています。ヘッドスピードが速いプレーヤーは4番アイアン、遅い人では6番アイアンくらいで降下角50度になると思います。降下角がなだらかになるとランも増えるので、(より降下角が大きくなる)ハイブリッドやフェアウェイウッドをロングアイアンの代わりにセッティングすることを勧めます」
PGAツアーのプロは、思った距離が出て降下角が確保されていればそれでオッケーという考え方が一般的。「打出し角やクラブ軌道などはまったく気にしません」(マクロウ氏)という言葉は、クラブの軌道にいつも悩んでいるアマチュアゴルファーにとっては、衝撃的とも言える発言だ。
「アマチュアとプロの考え方は大きく違います。でもアマチュアの場合はスピン量、ヘッドスピード、打出し角などばかりを気にしていますね。プロの場合はグリーンから逆算して考えますが、アマチュアは自分のスウィングのことばかり考えてしまいます」(マクロウ氏)
ゴルフというスポーツはボールを打ってプレーするもの。ボールがどう飛んでいるかを考えることが大事なのに、アマチュアの場合はスウィングを気にし過ぎているとマクロウ氏。
「プロはゴルフというスポーツをしていますが、アマチュアはゴルフスウィングというスポーツをやっているかのようです」
というマクロウ氏の言葉は、多くのゴルファーにとって耳が痛いのではないだろうか。結果だけを気にするプロたちにとって、弾道という結果を可視化してくれる解析器はまさに魔法のアイテム。我々アマチュアゴルファーが解析器の力を借りようと思ったら、まずはスウィングばかり気にしてしまう“頭の中”から変える必要がある、かも。