スウィングというプロセスをいじらずに、弾道という結果を変える
ゴルフ界に大きな変化をもたらした弾道解析器。PGAツアーのプロたちは自分のキャリー飛距離を管理してコース攻略に生かし、ボールの降下角度を見てクラブセッティングを見直すなど、積極的にこれを活用しているという。
以前は主役はあくまでスウィング。飛んでいく弾道はその結果に過ぎなかったが、解析器の登場により、主役は弾道となり、スウィングはその目的を達成するための手段となったとさえ言える。マクロウ氏は、このような考え方は、プロよりもむしろアマチュアにとって必要な考え方だという。
「スウィングを大きく変えることで、たしかに見た目は大きく良くなります。しかし、それはその分すごく大変な作業です。各人に合ったアドレス、ボールの位置、グリップ、見ている方向……まずそういうところをチェックすることで、スウィングをなるべく今と同じ状態のままで、今よりも思った通りのところに球が打てるように変えていくのがベターなんです。例えばインサイドアウトやアウトサイドインの軌道が強すぎることでミスの原因になっている場合には、ボールを置く位置を1個分変えただけでクラブ軌道は約2度変わるという統計的なデータもあるので、スウィングを大きく変えなくてもボールの位置を調整することで正しい軌道に近付けていく方が短時間で負担も少なく改善できると考えています」(マクロウ氏、以下同)
人によって筋力も柔軟性も異なるため、振り方は人それぞれ個性があっていい。結果として現れる弾道を解析し、その数値が良くなるように、ボール位置や狙い方など、比較的容易に変えられる部分をチューニングしていくわけだ。そして、このようなプロセスは、クラブフィッティングにも有効だという。
シャフトを軽くした結果速く振れるようになるのは全体の10%以下
たとえば、クラブを軽くすれば速く振れるというのは常識だが、解析器を使ってデータを集めると、それが果たして常識と呼んでいいのかどうか、心許なくなってくる。
「今までアマチュアの方を含めて多くの人のスウィングをチェックしてきましたが、シャフトを軽くして速く振れるようになった人は全体の10%以下でした。軽くなりすぎるとダウンスウィングのときにタメがつくれず、外側から下ろすようになってしまい結果的に飛距離に結びついていませんでした。それに対してジュニアゴルファーは、体力に対してクラブが重い場合が多いため、できるだけ効率の良い振り方を覚えます。だから、大人から見るとジュニアのスウィングはすごくきれいに見えるますし、クラブの重さを利用して効率よく飛ばせているのです」
おそらくこれは氷山の一角。解析器がさらに普及し、我々一般ゴルファーも日常的に利用できるようになってくれば、マンネリゴルフにも希望の光が差す……ような気がするが、マクロウ氏は最後に「解析器があればいいというわけではない」と釘を差す。
「弾道解析器はもちろん高価なものが多いですが、逆に言えばお金があれば買えます。しかし、まずデータを正しく理解して活用することが必要です。弾道解析器は必要なものですがそれがあれば良いというものではないです」
求められるのは、得られたデータを正しく分析し、それをレッスンやフィッティングにフィードバックできるコーチやフィッターの存在。解析器の進化とともに、それを取り扱う専門家も進化してくれたら、アマチュアゴルファーとしても嬉しい限りというものだ。
撮影/有原裕晶