未だに新作モデルが定期的に発売されるなど、すっかり定番となったオデッセイの2ボールパター。その最新作「Rボール」は、2ボールならぬ、1ボールともいえるスタイルのパター。だが実は2ボールも、開発当初は1ボールだったという。ギアライターの高梨祥明が名器「2ボール」の開発裏話を語る。

ラインよりもファジーに合わせられる“ディスク・アライメント”

パターにはアライメントと呼ばれる、目標に正しくフェースをセットしやすくするデザインを施すことが許されている。ライン(直線)やドット(点)などでヒッティングポイントの目安となる位置を含め認識させるのが通常だが、2001年に一風変わったアライメントが登場する。

それがオデッセイの発売したホワイトホット「2ボール」だった。ブリッジのようになったクラウン部に並ぶ、2つの白い“ディスク・アライメント”。ボールにヘッドをセットすると、まるで3つのボールが並んでいるように見えた。当時、開発責任者だったキャロウェイゴルフのリチャード・C・ヘルムステッター氏はこういっていた。

「直線というのは一見、ラインに対して合わせやすい感じがしますが、実は利き目の問題、ボール位置などによって錯覚も生じやすいことがわかっています。あなたにもまっすぐセットしたはずなのに、いざ打とうとした時に急に不安になった経験があるでしょう?

一方、この円形アライメント。円というのはどの方向から見ても変わらないですよね? 斜め後ろから見ても、真横から見ても、真上から見ても、です。つまり、ラインに比べてファジーに、迷いなく構えることができるのです」

そして、ストローク中は2つの円形の残像が白い帯のように見え、これもアライメント、安心材料となる、と説明してくれたのを覚えている。なぜ、20年弱も前の取材を思い出したかといえば、キャロウェイからオデッセイ・O-WORKS TOUR「Rボール」なる新製品のリリースが届いたからだ。2-BALLならぬ、1-BALLともいえるこのスタイル。どこかで見た記憶があった。

画像: これが「1ボール」的デザインの「Rボール」

これが「1ボール」的デザインの「Rボール」

名器「2ボール」の中に隠された、もう一つの大ヒットモデル

オデッセイ・O-WORKS「Rボール」をみて、テーラーメイドが2011年に発売した「コルザ ゴースト」パターに似ている、というゴルファーも多いが私はこの一つ目のようなデザインをみて、昔、キャロウェイ本社のR&D(開発部門)で見た、「2-BALL」の試作品を思い出していた。

スナップ写真を撮ったはずなので探してみると、やはりあった。「2ボール」は95年くらいから開発が始まり、写真は97年くらいの試作品。たしか試作3号ヘッドといっていたような気がする。なぜ、「2ボール」構想の途中に、「1ボール」があるのか? と、オデッセイパターの開発責任者、オースティ・ローリンソン氏に聞いたことがある。

画像: 左が97年に作られた2-BALLパターの試作3号ヘッド。その隣は試作9号(98年)。1.5ボールともいうべきものだ。(撮影/高梨祥明)

左が97年に作られた2-BALLパターの試作3号ヘッド。その隣は試作9号(98年)。1.5ボールともいうべきものだ。(撮影/高梨祥明)

「2つのディスク・アライメントを並べると、どうしてもヘッドの奥行きが長くなる。これは90年代のゴルファーにとってはかなり異質で、違和感のあるものだったのです。だから、我々は当時大ヒットしていた『ロッシー』の形をベースにしたかった。1ボールは、ロッシーのボディにディスク・アライメントを施したらどうなるかを確かめたものですね」

オデッセイの「2ボール」は、構想から6年、24個の試作品を経て当初のプラン通り、2つのディスク・アライメントが並んだデザインで完成した。ネオ・マレットの元祖ともいわれる奇抜なデザインだが、意外にもゴルファーの拒否反応は少なかった。その秘密をオースティン氏が教えてくれたことがある。

「「2-BALL」パターのアライメントではなく、フランジ(ソール)のカタチを見てください。わかりますか? この曲線が「ロッシー」なのです」

画像: 2ボールパターのイメージデッサン。ソールの曲線が大人気だった「ロッシー」のシェイプと同じ。(撮影/高梨祥明)

2ボールパターのイメージデッサン。ソールの曲線が大人気だった「ロッシー」のシェイプと同じ。(撮影/高梨祥明)

斬新なデザインの中に残された定番のシェイプ。これが違和感を抱かせないポイントだった。このほど発売される「Rボール」も、「ロッシー」のラインアライメントと、「2ボール」のディスク・アライメントを融合させたものだという。2モデルを合体させているが、全体のカタチは大型ネオ・マレットを踏襲しているところが、90年代とは異なるところか。

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