ジェイソン・デイが火をつけ、ガルシアが爆発させた
現在まで続く赤パターブームを生んだのは、ジェイソン・デイだ。2016年、「スパイダー・ツアーレッド」の前身となる限定モデル「スパイダー イッツィビッツィ リミテッド レッド」を使用して第五のメジャーことザ・プレーヤーズ選手権に勝利。パターの指標も極めて良かったことで、ツアーに赤パターブーム、もっといえば大型マレットブームをも巻き起す大きな要因となった。
その後、ダスティン・ジョンソンが「赤スパイダー」の黒バージョンを使用して圧倒的強さを見せつけ、さらには2017年セルヒオ・ガルシアが赤スパイダーでマスターズを制したことで、完全に定着するに至る。一時は、ショップの店頭から赤スパイダーが消えたほどだ。
さて、そもそも論から始めよう。赤いとなにがいいんだろうか? プロゴルファー・中村修は言う。
「赤と緑は補色、あるいは反対色の関係にあります。コンビニのセブンイレブンの看板をイメージするとわかりやすいですが、赤と緑は互いを引き立て合う色。緑の芝の上に赤いパターがあると、コントラストがつくんです」(中村)
テーラーメイドのツアー担当によれば、そのことでヘッドの残像が残りやすく、ストロークがしやすくなるのだという。単純に、赤いと気分が盛り上がる、といったことだけでなく、視覚的作用がストロークに好影響を与えるわけだ。
さて、今回はそんな赤パターから、3つのモデルをチョイスした。まずは、テーラーメイドの躍進に真正面から対抗した印象のオデッセイの赤パターから見ていこう。
ツアーでも使用率が高いオデッセイのパターだが「オー・ワークス ツアー R-BALL S レッドバージョン」は、カタチは2ボールタイプでも、ボールサイズの黒丸が後方に1つだけデザインされている。
「とりわけ太鼓判を押したいのは、ミスヒットの許容性。フェースのトウ側やヒール側に打点を外しても、ヘッドが当たり負けずにフェースの向きがブレにくい。大げさじゃなくて、クラウンに引いてある3本のサイトラインの範囲でボールを打てれば、方向がほとんどブレないしコロがりも悪くなりません。パットのときに打点がバラつく人や芯で打てない人も、ラインに打ち出しやすいパターですね」(中村)
注目したいのは、スパイダーと同じくショートスラントネックが採用されているネックの形状だ。これにより、ミスヒットへの強さだけでなく、ある程度の操作性も担保されている。では、同じショートスラントネックが採用されたスパイダーとの違いはどこにあるのだろうか。
「スパイダーのほうが、操作性があるように感じられます。重心が低いからヘッドが地を這うように低くシャローに動かしやすいし、ヘッド後方のトウ・ヒール側に重量を振ってあるのでミスヒットをカバーしてくれます。大型ネオマレットならではの安心感や許容性が欲しいけれど、少し手を使って操作したりシャープに打ちたい、繊細なタッチも出していきたい人にうってつけの“セミオートマ”なパターです」(中村)
国内メーカーにも赤パターはもちろんある。「ターゲットへスクェアに構えられる」ことを強調しているのが、キャスコの「Red9/9 RM-002」だ。こちらは、オデッセイとテーラーメイドとは異なり、センターシャフトを採用している。
「ブレードのトウ~ヒールにかけて白いラインが真っすぐ引かれ、後方には十字のターゲットマークが施されている。このデザインは秀逸で、イメージしたラインへスクェアにセットしやすいパターです」(中村)
また、「カーボンシャフトならではの球足の伸びやスムーズさがありますね。それでいて極太仕様なので、安定感があってコロがりすぎる心配もない」という。
これらの“赤パター”は総じて「赤いヘッドと白いボールのコントラストがハッキリして、ボールに集中できるのでミートしやすい」というメリットがあるとのこと。パットのお悩みを解決してくれる“赤パター”をぜひお試しあれ。
撮影/小林司