距離の調節はスタンスの向きで行う
距離の調節は、とても難しいものです。
小さめのクラブでフェースを被せたり、フルショット以上の力で打とうとすると、引っかけることが多いですし、大きめのクラブを短く持って軽く振ろうとすると、上手くヒットできないことが多いのではないでしょうか。
私の場合、距離感は、基本的にはその番手を普通に打ったときの距離を把握しておき、そこからの「引き算」で出しています。「もうちょっと飛ばせば」、という「足し算」はまずしません。たとえば、私は無風でフラットな条件で7番アイアンを普通に打つと、156ヤード飛ぶことになっています。もちろん体調の良し悪しなどで、多少は変わると思いますが、基準は156ヤードです。
もし打ちたい距離が152ヤードだったら、4ヤード飛ばない打ち方をします。逆に159ヤードだったら、6番アイアンで飛ばさないように打つか、7番アイアンで3ヤード手前に止まってもしょうがない、と思って打ちます。
なぜ小さめのクラブで飛ばすように打たないのか?
それは、飛ばすためにフェースローテーションを使うなどして、自分のスウィングを崩すのが嫌だからです。そうしてしまうと、普通のショットをするときも、もしかしたらフェースが返ってしまうのではないかと思って、自信を持って打てなくなるのが嫌なのです。
飛距離の落とし方は、決して「ゆっくり振ろう」「トップを小さくしよう」など、頭で考えないことです。いわゆる、ゆるんだ打ち方によって、ミスをする元になります。またクラブを短く握るのもお勧めしません。なぜかというと、クラブのバランスが軽くなって、早打ちになりやすいからです。
私の場合は、アドレスでの左足の「引き方」でトップの大きさが小さくなるように調整しています。アイアンだけでなく、ウェッジでも同様にします。私はよくオープンスタンスだと言われますが、自分の意識の中ではオープンスタンスなのではなく、体の向きはあくまで目標方向に直角で、スタンスだけ左足が「引けた」状態にしておくのです。そうすると、普通に振っても、トップが自然と小さめになります。
距離を落としたい場合には、左足をいくらか引いて、つねに「普通」にショットする。この「普通に打つ」というのは、プロもアマチュアも変わらない法則です。ただし、「左足の引き具合は!?」と言われると、それは経験上から来る感覚です、としか言いようがないのですが……。
番手間の中間の距離というのは、プロでも判断が難しいショットです。以前、あるトーナメントの練習日に一緒に回ったプロが、悩んだ末に小さいクラブでフルショットしたのですが、バックスピンがかかってショートしてしまいました。そして、グリーンに向かう途中に同組の先輩プロに「番手間の中間距離はどうやって打ち分けるんですか?」と質問したところ、「俺にわかるわけないだろう」という返事が返って来たそうです。ゴルフは奥が深いスポーツですね。
「田村流『あきらめる』ゴルフ」(ゴルフダイジェスト社)より
写真/有原裕晶