強いプレーヤーほど、同伴者のプレーを貪欲に見ている
トーナメント観戦に行ったら、せっかくなので、テレビ中継ではなかなか見ることができない姿もしっかり見ておきましょう。なかでも、必ずチェックしてほしいのは、打つ順番を待っているときのプロの行動です。ボールを打っていないときに、プロがどういうことをしているかを、しっかり見てください。
プロ・アマ関係なく、ラウンド中は人のプレーをきちんと見るのがエチケットです。つまり、自分勝手なプレーはダメですよ、ということ。これは、日本ゴルフ協会のゴルフ規則『第1章 エチケット』にも、「同じ組のプレーヤー全員がそのホールのプレーを終えるまで、その組のプレーヤーはパッティンググリーン上か、その近くで待っているべきである」と定められています。
若い選手たちのなかには、そういうエチケットを守れない人も、残念ながらたくさんいます。自分がホールアウトしたら、まだ他の選手のプレーが終わっていないのに、さっさと次のホールのティグラウンドに向かって歩き出す。奥田靖己さんは、そういう選手がいると、「オイ、お前はひとりでゴルフをやってるのか!」と怒鳴っていますよ。
もちろん、若い選手だけでなく、ベテラン選手にも、「若いヤツのプレーなんて見てられるか」と、次のホールに行ってしまう人もいます。これは本当に残念なことです。
そういう選手はそもそもゴルファーとして失格だし、どんなに技術が優れていても、勝てるプレーヤーにはなれません。エチケットの問題はもちろんですが、他の人が打ったボールがどのように飛んでいくか、グリーン上ではボールはどのように転がるか、というようなことは、ラウンド中の唯一の生きた情報なのです。
トーナメント中継の解説者が、「このホールのグリーンはこっちのサイドからはすごく切れますが、誰ひとりとしてハイサイド(プロサイド)に外している選手がいませんね。あまり切れるようには見えませんが……」というようなことをいいますよね。
それは、解説者自身が、そのホールをプレーしている選手たちをずっと見ているから。まるで自分の目で見て、打って確かめたかのようにわかるわけです。
人のプレーをじっと見ている選手と、まったく見ずに素振りなどを始めてしまう選手は、結果がはっきり分かれます。これだけは断言しますが、強い選手は人のプレーから絶対に目を離しません。谷口徹選手もそうですし、青木功さんもジャンボ尾崎さんも、中嶋常幸さんだってそうです。「どんなに小さいことでも生きた情報は絶対に逃さない」という貪欲さを、強い選手は持っているのです。
アマチュアも同じです。同伴者のプレーから目を離してはダメですよ。だって、自分が打つ前に、せっかくリハーサルしてくれているのですから。見なきゃ損です! それに、ゴルファーとしてそれが当たり前のことなのですから。
「ゴルフは100球打つより見てなんぼ!」(ゴルフダイジェスト新書)より
撮影/有原裕晶