計測器の進化により、インパクトでのクラブの軌道やフェース向きをゼロコンマ何度の精度で知ることができるようになった。ならば、軌道もフェース向きも限りなくゼロに近づけるのが理想……かと思いきや、実際はそうではないのだという。ゴルファー永遠の夢「真っすぐの球」はなぜ打てないのか、最新のゴルフの現場から考えた。

クラブ軌道もフェース向きも“ゼロゼロ”が理想のはずだが……

かつて「帝王」ジャック・ニクラスはこう言ったという。「真っすぐの球が、まだ打てない」。ゴルフの難しさ、奥の深さを伝える言葉として、ゴルフ界で語り継がれてきたこの言葉が、科学によって証明されたかもしれない。

インパクトが物理現象である以上、「真っすぐの球」を打つための条件は、クラブの軌道が真っすぐで、フェース面も真っすぐボールに当たることとなる。そして、トラックマンに代表される計測器の進化で、クラブの軌道、フェース面の角度などは即座に可視化することが可能となった。

画像: 多くのプロが採用し、自らの弾道やクラブの動きをチェックするの使う「トラックマン」(撮影/大澤進二)

多くのプロが採用し、自らの弾道やクラブの動きをチェックするの使う「トラックマン」(撮影/大澤進二)

軌道を表すクラブパス、フェース向きを表すフェースアングル。両者の数値をゼロにすれば、二クラスが「まだ打てない」と語った「真っすぐの球」が打てるはず……だが、現実はそうではない。谷原秀人、藤本佳則らを指導するツアープロコーチ・阿河徹は言う。

「トラックマンで、理想的な数値であるクラブパス0度、フェースアングルも0度の“ゼロゼロ”を目指しても、いい結果になったことがないんです。ところが、『こういう打ち方がベストだろうな』と仮説を立て、それが合っていた場合は、結果としてクラブパスもフェース向きも0度に近づいていくんです」(阿河)

阿河いわく、「ベストな打ち方」は人によって異なるため、トラックマンの数値を参考にしつつ、トライ&エラーで探していくのだという。その際、「ベストな打ち方」に近づけば近づくほど、数値は理想値である“ゼロゼロ”に近くなる。

しかし一方で、最初から“ゼロゼロ”の数値だけを追い求めても、結果は出ないという。また、仮に数値上(ほぼ)“ゼロゼロ”であっても、それが各人にとってベストのパフォーマンスとなることは極めて少ないという。これは一体、なぜなのだろうか。

「ゼロゼロを目指して、いいことはひとつもありません」と断言するのは、2012年の賞金王で、「僕は、日本で最初にトラックマンを導入したプロだと思う」というベテラン・藤田寛之だ。

「(ゼロゼロは)たしかに理想かもしれませんが、実際は目標方向に球を飛ばす方法は人の数だけあり、歩き方が違うように、スウィングもひとつではないんだと思います。プロの選手は、フェース面の使い方や入射角、スウィングプレーンなどで自分なりにボールを作ってきていて、それがいいときはどうなっていて、悪いときはどうなっているか、そのあたりの数値を、自分は見ています」(藤田)

画像: ベテラン・藤田には「ゼロゼロ」ではない自分なりの理想のインパクトのカタチがあるという(撮影/姉崎正)

ベテラン・藤田には「ゼロゼロ」ではない自分なりの理想のインパクトのカタチがあるという(撮影/姉崎正)

ゴルフは目的地にボールを運ぶゲームであり、その飛ばし方は無数にあっていい。真っすぐの球を打つ必要はない……。たとえばほんの少しインサイドからクラブを入れ、ほんの少しフェースが閉じた状態。人によってはそんなインパクトをした場合にもっとも理想的な弾道を得られるといったように、人それぞれ持っているクセは、生かしたほうがいいのだ。

「僕は、日本で最初にトラックマンを導入したプロだと思います。クラブパスなど、多くのデータを見てきましたが、プレーヤーが深く知ることでマイナスになることもあるんです。なので、知りたいデータだけを知ればいいというか、だんだん見るデータを選別するようになっています」(藤田)

計測器の有用性は疑う余地がない。しかし、その数値に自らが縛られては意味がない。“ゼロゼロ”ではない、自分なりの理想値を数値で管理し、それにより好不調の波を少なくするというのは、実にベテランらしい、道具との向き合い方だ。

計測器が存在しなかった時代に全盛期を過ごしたニクラスの真意は「真っすぐの球(ゼロゼロのインパクト)」は「打てない」以前に、「打つ必要のないもの」、だったのかもしれない。

二クラスの全盛期から数十年、ゴルフスウィングの「たったひとつの正解」は、どうやらまだ見つかっていないようだ。

GOLF5

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