「勝つこと」が当たり前のようにプレーしている
鈴木愛選手といえば、毎試合、誰よりも遅くまで残ってパットの練習を積み重ねていること、それを賞金女王となった今でも続けていることが印象的です。その隠れた努力の原動力は、2年連続の賞金女王を獲得することであり、その先の米ツアー挑戦、海外メジャー制覇など、目標がしっかりと定まっているからでしょう。
「ほけんの窓口レディース」では、15番を終えて首位の菊地絵理香選手とは2打差。追い込まれた展開の中でしっかりと自分のやるべきことに集中することで、勝利を呼び込むことに成功しました。今季は早くも3勝目といい意味で「勝ち慣れてきた」ことも含め、鈴木選手は昨年からさらに成長していると思います。当たり前のように勝っている。そんな印象すら受けます。
勝つことを当たり前にできるようになったプロといえば7勝を挙げ獲得賞金額2億3千万円を超えた2015年のイ・ボミに迫るというか、上回るほどのペース。現時点で獲得賞金は既に7千万円を超え、イ・ボミを追い抜ける存在にまで成長してきています。一体何勝を挙げるのか、予想も難しいほどの強さです。
さて、「ほけんの窓口」で勝つまで、直近ではサイバーエージェントレディスで3位、サロンパスカップで2位と、勝てそうで勝てない試合が続いていましたが、敗北の原因は凡ミスでした。とくにアイアンショットでチャンスにつけられていませんでした。
ところが今大会は、とくにピンをダイレクトに狙う120ヤード以内のショットの精度がよかったように思います。最終18番のバーディを決めた3打目のピンを狙うショットは、距離を調整しながら方向性を出すショット。ヘッドスピードをしっかりとコントロールし、ピタリとピンに寄せました。
ヘッドを走らせ過ぎずに狙った距離に必要なヘッドスピードをしっかりと出す一打です。手先でヘッドスピードをコントロールするのではなくおへその前にクラブがキープされていて、腹筋でしっかりクラブが振れていました。
サンデーバックナインの優勝争いの中でピンを狙うショットが引っかかって左に飛び、グリーンからこぼれるというシーンを見たことがあると思いますが、これは体を止めてしまうことでヘッドが走りすぎた結果出るミス。
狙った距離以上飛ばしたくないコントロールショットこそ体を止めずに、お腹の回転とクラブの動きを同調させることでヘッドスピードをコントロールするプロならではのワザを、緊迫する場面で見せてくれました。敗れはしたものの、最終日にチップインを2度決めた菊地選手のアプローチも同じ動きでした。
勝ちきれない試合で見られたアイアンでチャンスにつけられないという部分をあっさりと修正しての今回の勝利。今シーズンは8戦に出場し、優勝3回、2位と3位タイが2回ずつ。トップ3を逃したのがたったの1度だけ(20位タイ)という異次元の強さは、まだまだ進化を続けています。
撮影/岡沢裕行