シャフトの罠。ロフトの罠。情報収集の罠
過ごしやすくてゴルフには最高にいい時期ですね~。こんにちは。中々ゴルフに行けなくて悶々としている店長小倉です。GW空けにこんなお客様がご来店されました。真新しいクラブを持ってきて、
「ねぇ、このクラブ本当にSなの? すごく硬く感じるんだけど。ロフトも10度なのにボールも上がらないし、間違ってない? 前のクラブと同じスペックなのに全然飛ばないんだよね。飛ぶって聞いたから買い替えたのに」
クラブを見させていただきましたが、とくに問題はありません。そこで前のクラブが何か聞いてみると、なぜそう感じたのか良く分かりました。前のクラブがいわゆるアベレージ向けのつかまりの良い高さの出しやすいモデルで、今回お持ちになったモデルは、飛ぶと話題のアスリート向けクラブだったのです。
今回のケースには、みっつの罠というか問題が隠れています。ひとつめはシャフトのフレックスを今使っているモデルと同じで良いだろうと思ったこと。ひとつめはクラブのロフトも今使っているヘッドと同じロフトを選んでおけば同じぐらい上がるだろうと思ったこと。そして購入するクラブの十分な情報収集をしなかったことです。
順に説明していきましょう。まずシャフトのフレックスの罠。シャフトの柔らかさ、しなる量はRやSなどといった表記で表現されています。実はこれ同じRでもメーカー違い、細かく言えば同じメーカーでもブランドによって微妙にしなる量が違うのです。なぜこんなことが起こるのか?
それはゴルフシャフトの基準にはJIS規格のような統一した基準が存在しないから。
各メーカーは開発するクラブのターゲットゴルファーに合わせてフレックスを決めています。その基準はメーカー次第。極端な例を挙げるとA社のアスリート向けブランドのRシャフトは、B社のアベレージ向けブランドのSより硬いなんてこともありうるのです。
わかりやすい例が海外ブランドの海外仕様のクラブのシャフトフレックス。同じモデルの日本仕様のシャフトと比べると同じフレックスでも明らかに海外仕様のほうが硬く感じます。くれぐれも今のクラブのシャフトがちょうど良いからと言って次も同じフレックスで良いなんて思わないでください。
表示ロフト=ロフトの実測値とは限らない
次にヘッドのロフト角の罠。ゴルフ界にはリアルロフトという言葉があります。端的に説明すると実測のロフト角の事を指します。なぜこんなことが存在するかというと、
ヘッドに記載されているロフトを表す数字と実測のロフト角には差があるから。
ほとんどの場合、記載されている数字よりリアルロフトの方が多くなっています。なぜこんなことになっているかというと表記している数値通りのロフトにしてしまうと思ったよりボールが上がらず難しいという評価になってしまいがちだからです。
この傾向はアベレージゴルファー向けのクラブに多く見られますね。最近ではカチャカチャ(調整機能)でロフト角を任意に替えられるクラブが増えてきたので表記とリアルロフトの差がほとんどないクラブも増えてきましたが、現代でも表記とリアルロフトに差があるクラブはまだまだ存在します。製造時の誤差の部分もありますが、あえて差を設けているのです。
さらにボールの打出し角は、重心位置の影響もあります。例えリアルロフトが全く同じクラブでも重心位置が深いモデルと浅いモデルを打ち比べると重心位置が深いモデルの方が、インパクトロフトが大きくなりやすくボールが上がりやすくなります。
つまりクラブヘッドに表記されている数字は、同じモデルの中での上がりやすさの目安にしかならないのです。
最後のクラブの情報収集の罠。昨今のクラブ、とくにドライバーはルールでフェースの反発係数をはじめ、長さなどを規制されています。そのため特色や結果を出すために各社様々な工夫を凝らしたモデルが多数販売されています。ルールで規制されている以上、良い結果を出し続けるためにはよりゴルファーの層を絞ったクラブ開発をするしかなく、合う合わないがハッキリするクラブが多いのです。
とくに今回のお客様がお持ちいただいたクラブは、低スピンが売りのアスリートのためのモデル。前回のクラブといくらシャフトフレックスやロフト表示を揃えたところでクラブ総重量や重心位置など、クラブとしての性能差が非常に大きかったのでこんな事例になってしまったのです。
最新のクラブは過去のクラブと比べて間違いなく高性能です。ですがいくら高性能でも使うゴルファーに合わなければ良い結果は生まれません。次にクラブを買い替える時は、可能であれば試打をし、ショップの店員さんなどに相談しながら購入することをお勧めします。