国内男子ツアー「関西オープン」の最終日、時松隆光が史上4人目のアマチュア優勝を目指した久保田皓也選手、そして連覇を狙う今平周吾との3つ巴の戦いを制し、3勝目を挙げた。時松の平均飛距離はツアー87位の274.08ヤード。それでも勝てる理由は、「自分のゴルフを貫く」強さにあった。

独自のグリップ、独自のプレーを「やり続ける」凄みがある

時松隆光選手といえば野球のバットと同じ握り方の「ベースボールグリップ」で有名です。左手親指をシャフトの上に乗せないことから指への負担が少なく、左手親指の古傷を抱える丸山茂樹選手が、時松選手に習ってそのグリップの習得に励んでいるという話もあります。

このベースボールグリップであったり、ライジングパットと呼ばれる独特のパッティングストロークであったりは、師匠である篠塚武久氏が提唱する「桜美式ゴルフ」の教え。時松選手は、その伝道師的存在ですが、その分だけパッと見には“異端”だったり“異色”というイメージがつきまとってきました。

画像: フェアウェイを外さず、パーオンを逃しても寄せてパーをとる。それが時松のプレースタイルだ(写真/2018年の日本プロゴルフ選手権、撮影/姉崎正)

フェアウェイを外さず、パーオンを逃しても寄せてパーをとる。それが時松のプレースタイルだ(写真/2018年の日本プロゴルフ選手権、撮影/姉崎正)

時松選手の強さ、凄みは、人と違うことをやり続ける、やり続けることができる点にあります。結果が出ようが、出まいが、自分がこれと信じたゴルフを貫く。先週、日本プロを50歳にして制した谷口徹選手にも通じる強さを、そのゴルフからは感じます。

データを見ても、ドライビングディスタンスは274.08ヤードで87位と飛ぶほうではありません。フェアウェイキープ率は14位と上位ですが、パーオン率は34位と2打目のキレ味が抜群とまでは言ず、さらには平均パット31位、バーディ率48位とバーディを量産するわけでもないんです。

しかし、注目したいのはパーキープの率8位と平均ストロークの16位。パーオン率34位でもパーキープ率が8位なのは、グリーンを外しても寄せとパットでパーを拾い、崩れないゴルフを展開していることがわかると思います。

プロにとって、バーディは「取れる日」と「取れない日」があるものです。どんなに高いレベルにあるゴルファーでも、バーディを計算して奪うのは難しい。一方で、プロにとってパーは狙って取れる。バーディを奪いに行くとボギーの危険性がありますが、パーを狙うゴルフにボギーの危険性は減ります。淡々とパーを積み重ね、チャンスにかける。その結果、ツアーで16番目に平均ストロークがいいという結果が残るわけです。

「仕掛けていっても、僕は自滅するタイプ。そんな技術もない。元々パーを積み重ねていくスタイル。我慢比べでもない」時松選手のプレー哲学は、優勝後のこのコメントに集約されていると思います。我慢比べをしているのではなく、あくまで自分のプレーを貫き通しただけ、ということでしょう。

終盤でフェアウェイを外しても、2打目でグリーンを外しても落ち着いていて、アプローチを寄せてパーで切り抜けるようなシーンは、時松選手の真骨頂と言えるように思います。バーディを奪うだけが勝つための方法ではないのが、ゴルフの面白いところのひとつです。

前週の「日本プロゴルフ選手権」を50歳で制した谷口徹選手は、苦しい状況でも自分のプレースタイルを貫き、ここぞという肝心なパットを決めることが重要だと教えてくれました。

時松も独特のスウィングを貫いて実力をつけ、独自のプレースタイルを貫くことで勝利を手繰り寄せています。どんな選手にとっても、トーナメントで優勝するチャンスは1年のうちにそう多くはないはず。だからこそ、チャンスをつかみ取るためには、自分のスタイルを貫くことが大切なのだと、私自身改めて教わった気がします。

画像: 時松のパー5での累計スコアは全体の1位。パー3、パー4ではパーを、パー5ではバーディを奪う(写真/2018年の東建ホームメイトカップ、撮影/岡沢裕行)

時松のパー5での累計スコアは全体の1位。パー3、パー4ではパーを、パー5ではバーディを奪う(写真/2018年の東建ホームメイトカップ、撮影/岡沢裕行)

アマチュアゴルファーのみなさんも、できる・できないは度外視して、自分のプレースタイルはこれだと決めて、それを貫くことはスコアメークの上でとても重要なことです。

とにかくドライバーを飛ばして残り距離を少しでも短くするジャンボ尾崎タイプなのか、フェアウェイキープ率を高くしてステディなスタイルの稲森佑貴タイプなのか、ショットはそこそこでもアプローチとパットでスコアを崩さない、時松隆光や谷口徹のようなタイプなのか。

どんなタイプかによってコース攻略の狙いどころや、選ぶ番手も変わってくるはず。次のゴルフは、1日を通じて「自分のゴルフ」を貫き通すと、なにか新しい発見があるかもしれません。

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