「こんなに早くプレーオフを経験できるなんて信じられない気持ちです。ベストを尽くしたので悔いはありません 」と2シーズン目の優勝争いに手応えをにじませた畑岡。
ルーキーイヤーの昨年は環境やコースに慣れるのに精一杯でゴルフどころではなかった。予選落ちの山を築きシードも獲れず傷心の帰国。だが帰ってきてすぐに国内で2勝を挙げたところは最高峰のメジャー(日本女子オープン)をアマチュアで制した経験を持つ畑岡ならでは。
その勢いで挑んだ米ツアーのファイナルQTをトップ通過して戦う今シーズン、序盤こそ予選落ちもあったがここ数試合はトップ20を外さない安定感のあるゴルフで19位タイ、19位タイ、7位タイからの2位タイ。「初優勝も近い」ともっぱらの評判だ。
国内に目を向けると畑岡と同じ学年の新垣比菜がサイバーエージェントレディスで優勝。勝みなみも今季すでに4度トップ10に入っており、小祝さくらや三浦桃香らが優勝戦線を賑わしているが、98年&99年生まれの彼女たちを“黄金世代”と呼ぶのはご存知の通り。
そして彼女たちは揃って昨年現役を引退した宮里藍に憧れ、その背中を追いかけ育ってきた世代でもある。宮里が11年に世界ランク1位になった頃は12歳前後。多感なときに世界で躍動する小柄な“藍先輩”の一挙手一投足に熱視線を注いだもの。
それはかつて韓国で起きた現象に似ている。98年に米ツアーデビューを飾ったパク・セリが全米オープン&全米女子プロゴルフ選手権のメジャー2冠に輝いたときフィーバーに湧いた韓国で88年生まれの“パルパル世代(韓国語で88をパルパルという)”が躍進。パク・インビ、シン・ジエ、チェ・ナヨンらがナンバー1を競い合い“セリ・パクチルドレン”と呼ばれたもの。
宮里の出現で日本にも“藍チルドレン”すなわち黄金世代が形成され、いま着実に世界に翼を広げている。
宮里が贈った言葉で畑岡が一番印象に残っているのは「自分を信じてやるだけ」というもの。これは現役時代の宮里最大のテーマでもあった。
「この番手でいいのか?」「このラインでいいのか?」「風の読みは果たして合っているのか?」などなど。コースは常にプレーヤーを惑わそうと巧みな罠を張り巡らせている。そんなときいかに自分を信じ、目の前の一打に集中できるか? それが宮里にとって勝負を左右する鍵だった。
一度(ひとたび)アドレスに入ったらどんな迷いも邪念も振り払い“自分とターゲット”だけの世界に浸る。まさに一球入魂。たとえ風が吹こうが槍が降ろうが心に決めたショットを実行するのみ。そんなメンタルの強さが宮里藍、米ツアー9勝の実績につながった。
黄金世代について宮里は「私よりずっと飛ぶ。頼もしい」と目を細める。畑岡の平均ドライビングディスタンスは目下264.8ヤードで部門別ランキング23位。飛距離で遜色がないのは米ツアーで戦ったいく上で大きなアドバンテージでもある。
“藍チルドレン”たちの今後の活躍が楽しみだ。