松山が選んだのは、ひと回り小ぶりな440ccヘッド
ウェルズファーゴ選手権から、松山英樹はテーラーメイドの「M3 440」ドライバーに変更しています。タイガー・ウッズやローリー・マキロイなど多くの選手が使っている「M3 460」ではなく、その名の通り、ひと回り小ぶりなサイズのモデルです。
今年のはじめに、ダスティン・ジョンソンが433ヤードのパー4でホールインワン寸前のショットを放ち、一躍注目されたのが同社の「M4」ドライバー。市場でも目下、売れ筋No.1です。ツアープロの使用者が多いのは、「M3 460」で、こちらも人気になっています。
この2モデルと比較すると、「M3 440」のほうは、あまり注目されることがないかもしれません。一回り小さい上級者向けのヘッドという位置づけのためか、あまり購入の選択肢にも入らないようです。雑誌などの試打企画では、そもそも取り上げられないことすらあり、松山が使用したことを意外に感じた人も少なくないでしょう。
ところが、私事で恐縮ではありますが、世間が「M4」フィーバーに沸くなか、筆者は発売と同時に「M3 440」を購入。以来、エースドライバーとして愛用しています。松山のそれまでのドライバーは、キャロウェイの「グレートビッグバーサ」(2015年モデル ※以下GBB)。こちらも手元にあるので、改めて新旧の松山使用ドライバーを打ち比べてみました。
「M3 440」は、扁平で投影面積が大きい最近の流行のヘッドとは異なり、締まった“顔”が特徴。経験豊富なゴルファーには構えやすく、小ぶりな分だけ振りやすくなっています。筆者が購入の決め手にしたのもこの振りやすさ。他のメーカーでも、460ccヘッドよりも一回り小さなモデルをラインナップすることが少なくありませんが、それらのモデルに比べると、やや曲がりにくくなっているのも嬉しいところ。低スピン性能は高く、飛距離が出やすい特性です。
「GBB」は460ccヘッドで、丸みを帯びた形状は安心感がありますが、「M3 440」と同様、バランスの取れた形状です。ミスヒットに強く、さらに曲がりにくさがあります。プロが使うドライバーの中ではつかまりがよく、ドロー系のボールになりやすい特性と言えそう。「M3 440」でストレートボールなら、同じように打っても「GBB」はドローになるくらいの差があります。
つい先日、松山自身が、アイアンが真っすぐいくと、ドライバーが右に出やすい点をコメントしていたようですが、「M3 440」では、以前の「GBB」に比べて、もう少しボールをつかまえたいはずです。このあたりはウェート調整などで対応できるでしょう。両モデルの挙動を似せるには、「M3 440」はややドローのポジションに、「GBB」はややフェード寄りのウェートポジションにする必要があります。
まとめると、以下のようになります。
1.「GBB」のほうがより曲がりにくい
2.「GBB」のほうがつかまり、ドローになりやすい
3.「M3 440」のほうが、より低スピン傾向
4.「M3 440」はより振り切りやすい
共通点は、ウェイトの調整機能があり、プレーヤーが使いたいようにヘッド特性を調整できること。現在は、多くのプロがこのウェイト調整機能を細かく動かして、自分の意図や調子に合わせてクラブを調整しています。この機能を使いこなすことは、もはや現代のプロにとって、必要不可欠なスキルでしょう。
そしてもう一点が、バランスがよく、調和の取れたヘッド形状です。つかまりが良さそうで、かと言って左にいくイメージもない。使い古された表現ですが、構えてみてスッと目標方向を向いてくれる、いい“顔”のドライバーは意外とないものです。加えて、打感・打音もいいですね。「GBB」のほうがより金属音ですが、どちらも手応えのある分厚い打感です。
比較すると、顔や打感といった感性に関わる部分は似ているものの、ヘッド特性は、同じように使うのが難しいくらいの違いはあると言えるでしょう。松山はドライバー変更後、飛距離を伸ばしていて、特性が似たクラブを求めるというよりも、むしろ新しいドライバーの機能を活かして、よりパフォーマンスを向上させたいという意図がありそうです。
市場の主流とは一線を画する、小ぶりな440cc。しかし、昨年から445ccのピン「G400」がスマッシュヒットしているように、より振り切りやすいサイズのヘッドが合うゴルファーは少なくないはずです。難しいという先入観にとらわれず、試してみるといいでしょう。