待ち構えるのは270ヤード超のパー3、700ヤード超のパー5!
今週始まるミズノオープンの試合会場である茨城県のザ・ロイヤル ゴルフクラブは、国内最長の8143ヤードを誇るモンスターコースで、今回はもっとも長い設定の日で8007ヤードの設定になる予定。国内はもちろん米ツアーやメジャーのコースと比べても長い。
これには、国内ツアーから世界で戦える選手を育てようという意図があるという。世界のゴルフ界は飛距離300ヤードが当たり前の時代となり、今や飛ばさなければ戦えない時代。そんな時代の変化に日本ツアーが取り残されないために、ザ・ロイヤルGCは8000ヤード超のセッティングが可能なコースとして改修されたのだという。
では、実際にプレーした選手たちはこのコース、そしてセッティングをどうとらえているのか。まずは昨年、ザ・ロイヤルGCで開催されたチャレンジツアー(現・AbemaTVツアー)「ザ・ロイヤル ゴルフクラブチャレンジ」でプレーした経験がある小鯛竜也に聞いた。
「(8000ヤード超のセッティングは)昨年のチャレンジツアーで経験してます。まずは長いです。風が吹いたとき、たとえば16番(昨年の試合では705ヤード!)がフォローになると、次の17番はアゲンストになるような行ったり来たりするレイアウトなので、どっちの(方角からの)風が吹いたとしてもやさしくなることはない。一日一日の一打一打に集中しないとならない。世界基準を念頭に作られたコースですし、この大会で上位4名に入っることができれば(出場権を与えられる)全英オープンに自信を持っていけると思います。今年の前半戦は、この試合に向けて照準を合わせてきました」(小鯛)
大会の冠スポンサーであるミズノの契約プロなこともあり、鼻息が荒い。長い距離、硬いフェアウェイ、深いラフ、吹きすさぶ風……全英オープンのセッティングを想定するならば、その前哨戦となるこの試合のセッティングもまた厳しくて当然、ということだろう。
「長い、グリーン速いし、アンジュレーションもある。こういうセッティングが何度もあればまた(日本ツアーが、従来と)違ったことになるとは思います」そう語るのはベテランの宮本勝昌。
総ヤーデージ8000ヤード超と聞くと、飛ばせば飛ばしただけ有利なようにも思えるが、飛ばし屋として鳴らしたベテランの意見は少し違うようだ。
「やっぱりショートゲームが大事なんだと思いますね。今はみんな飛ばし屋なんです、ショートヒッターって今はいないんじゃないですか。パターも含めてショートゲームがうまくないと勝てないと思います。僕としてはバーディがたくさん獲れるようなセッティングではないので、できるだけボギーを打たないようにしたいですね。そういう意味でもショートゲームが重要になってきますね」(宮本)
昨年のチャレンジツアーで3日間アンダーパーで終えた選手が6人しかいなかったことからも窺えるように、8000ヤードを超える長さだと、そもそもバーディの数自体が多くはならない。なので、勝負は小技が決める……。
そこに「見ていて面白いのでしょうか?」と疑問を投げかけるのは、PGAツアー参戦経験のある丸山大輔だ。
「パー3で250ヤード、パー5で600ヤードを越えるセッティングは見ていて面白いのかな? と思います。米ツアーでは、実はパー5はそれほど長くありません。だからこそ(グリーン周りに)池やハザードがあってもイーグル狙いでアグレッシブに攻める姿が見られる。一方で、パー3にはザ・プレーヤーズ選手権の17番ホールのように、120ヤードくらいしかないのにプロでも池に入れる難しさがある。ああいうのが観ているほうもプレーしているほうも楽しいし、プレッシャーを感じると思うんです」(丸山大輔)
たしかに、最近は全米オープンのセッティングなどでも、長いホール、短いホールのメリハリが効いているケースを目にする機会が増えてきた。丸山は、PGAツアーのセッティングについてさらにこう解説してくれた。
「(パー5が短めな代わりに)パー4が長いんです。長いパー4をいかにスコアを崩さずに切り抜けるかが大事になってきます。パー5でレイアップしたほうがバーディを取れるセッティングになってしまうと、結果的には(選手が)2オンを狙わなくなって、見ていて面白くないと思うんですよね」(丸山)
丸山はこう厳しい意見をあえて述べるが、このような意見が出るのも、今回のセッティングが「他と違う」からこそ。このような試みと、それに対するプロからの率直なフィードバックが、ツアーを成長させる要素となるのは間違いがないはずだ。
勝てばメジャー大会への切符を手にすることができるだけではなく、厳しいコースセッティングによって、メジャーさながらの緊張感溢れる試合になる可能性は高い。ぜひ注目してほしい大会だ。