「大きなトップが唯一生むのは、その方が飛ぶような気がするという感覚だけ」
50歳を過ぎ、飛距離が出るわけでもない中、日本プロで優勝をささえたベースはパッティングだけでなく、当然スウィングにもある。谷口徹選手は、身体も柔らかいタイプではないので、アマチュアには比較的に参考になることは多いだろう。
谷口選手の全体的なプレーを見ていて1番気になったのは、常に変わらない素振りである。最近は石川遼の極端なフラットでレイドオフな素振りが注目を浴びたが、谷口選手はだいぶ昔から石川選手ほど極端でないにしろ、フラットな素振りをしてきている。
私はかねてから、スウィングデータ分析結果に基づき、フラットでコンパクトなスウィングを推奨している。マット・クーチャー、リッキー・ファウラー、USPGAの屈指の飛ばし屋トニー・フィナウなどが分かりやすい例だろう。コンパクトスウィングだけで言うとジョン・ラームも非常に分かりやすい。
フラットスウィングを推奨する理由は、横振りの方が縦振りよりもデータ的にもかなりの有意性が見られることと、理屈的においても良いからだ。
そしてコンパクトスウィングを推奨する理由はトップの大きさと飛距離が比例しないということが1番の理由である。トップを大きくするということは、動きが増えるということなのだが、動きが増えたことにより飛距離が増えないのなら、そこに労力を費やすのは無駄ということになる。むしろ、動きを大きくすることでミスするリスクは上がる。特に練習量をプロのようにとれないアマチュアにはこの無駄な動きのリスクは顕著にあらわれてくる。
大きなトップが唯一生むのは、その方が飛ぶような気がするという感覚だけだろう。当然、子供のころからゴルフをし、常に練習しているゴルファーは多少トップがオーバースウィングしているからといってミスする確率が飛躍的に上がるわけではないのだが、同じ練習量、同じ慣れを条件にした場合は、やはりコンパクトの方が安定感という視点からオーバースウィングよりも有意性が認められるだろう。
谷口選手の素振りは上で述べた点を実戦するにおいてかなり参考になる。素振りとスウィングは必ずしも一致しないわけだが、谷口選手のアイアンショットはかなり素振りに近い動きができており、アマチュアは是非参考にしていただきたい。ポイントはバックスウィングが身体から極力離れず、フラットでコンパクトだということ、そしてフォロースルーはバックスウィングに比べ大きく右方向に振り抜いている。
トップの位置がコンパクトということは拳とヘッドの位置がボールに近いということで、インパクトまでの道のりが短いことを意味する。これによりインパクトでミスコンタクトする確率が飛躍的に減ることが期待できる。そしてフォロースルーを長く大きくだすことにより、ラインを出しやすくなる。逆にアマチュアの多くは、この谷口スタイルの逆パターンでスウィングをすることが多いので、この谷口選手のスウィングスタイルを、本当にアマチュアに推奨したい。
谷口選手のフォロースルーは大きくしっかり右に振り向いているのでひっかけは出にくく、スライスもしにくい。なかなか芯で捉えられない、スライスが止まらないといった問題を抱えるアマチュアの方は是非、谷口流の素振り、そしてアイアンショットを参考にしてみてはいかがだろうか。パッティングルーティーンに続き、谷口選手は参考になることが非常に多い。谷口選手の今後の活躍にも是非期待したい。