今期12試合に出場し、予選落ちはわずかに1度。今回の優勝も含め、実に8試合で17位以内と、抜群の安定感を見せていた岡山絵里選手。これまで何度も優勝争いに顔を出していたこともあり、初優勝に驚きはありません。突然高く飛んだわけではなく、ひとつひとつ足元にステップを積み上げ、つかむべくしてつかんだ勝利と言えます。
驚くべきは、成績だけでなく、データ面でも極めて安定しているという点です。LPGA(日本女子プロゴルフ協会)の公式サイトには、パーオン率、平均パット数など、23部門のデータが公開されていますが、岡山選手はなんとそのうち19部門で30位以内にいます。
なかでも特筆すべきはパーオン率で全体の6位と、岡山選手がショットメーカーであることを物語ります。そのスウィングを、少し詳しく見ていきましょう。
まず、最初に言えるのは、非常に基本に忠実なスウィングだということです。個性的なところを挙げるとしたら、トップからの切り返しで顔の向きがややルックアップ気味になるところ。帽子のつばを見ると、ターゲット方向にゆるやかに顔を向けながら打っているのがわかると思います。
ルックアップ気味に振ることのメリットは、インパクトで合わせる動きが生じにくくなることから、クラブの振り抜きが良くなること。クラブの軌道上にたまたまボールがありました、というイメージで、カラダに負担が少なく、軌道のブレも少なくなります。成績、データともに安定するのが納得のスウィングです。
プロでも、今週は思ったより右にボールが出るぞ、とか、今日はどうにもボールがつかまり過ぎる、なんていう日があります。それは、軌道がブレる場合と、フェース面がズレる場合とふたつの原因が考えられますが、岡山選手の場合、軌道がブレにくいことで、フェース面さえしっかりと管理できていれば、その週はパット次第で上位に顔を出せる、という状態になるのだと思います。
もうひとつ、インパクトの写真を見てみましょう。左腕が左胸の上に乗り、フォロー(次の写真)でも左脇がしまったままです。アマチュアの方の中には、インパクト以降左わきが空いてしまう人が多くいますが、それは体の回転が止まっているから。
岡山選手の場合、左腕を左胸の上に乗せた状態のまま、フォローまでずっと体を回転させ続けています。その結果、インパクトでヘッドが減速することもないのです。ツアー上位のショット力は、この回転力がもたらしています。
ここまで説明してきたように、岡山選手は調子の波が生じにくいスウィングをしています。初優勝を遂げた今は調子がピークの状態のはず。全米オープンの予選を突破した、その週末にツアー初優勝を遂げた男子の秋吉翔太選手ではありませんが、岡山選手にもこのままの勢いでさらに大暴れしてもらいたいですね。