招待試合から始まったプロツアー
日米のプロツアーの違いをお話ししましょう。
ゴルフというスポーツで、プロが試合をするようになったのは、アメリカのメンバーシップのゴルフ場が、プロを集めてエキシビションマッチを始めたのがきっかけです。
「たまにはプロでも呼んで、彼らの技がどれくらいすごいか、見てみよう!」と、メンバー同士がお金を出し合い、集まったお金を賞金にしてプロを招待し、ワン・デイ(1DAY)の試合を組みました。いってみれば、これがプロのトーナメントの始まり、というわけです。
現在の米ツアーでも『Arnold Palmer Invitational』(アーノルド・パーマー招待)というように、ツアー名称に『Invitation(招待)』という言葉が含まれている試合があるのは、「プロを招待して試合をする」名残があるからでしょう。
その後、「あっちのコースがエキシビションマッチをやっているらしいぞ。だったらウチのコースでもプロを集めて、対決させようじゃないか」といって始まったのが、インタークラブマッチ、つまり日本でいうクラブ対抗戦です。やがて、地域や規模が拡大し、地区オープンや大都市の試合へと発展していったのです。
観客を楽しませるのがプロスポーツの原点
「今日はあのコースでエキシビションがあるから、出場すればお金がもらえるぞ」
プロの技を見るために集まったギャラリーを存分に楽しませ、そこで集まったお金を報酬として受け取る。プロたちは、いわば“出稼ぎ芸人”のような存在だったのです。
初期の頃の、欧米のプロの試合では、ゲームが終わったあとに、必ずエキシビションが行われていました。それは、プロが曲芸的なショットを披露したり、プロとアマチュアが一緒にラウンドしたりと、エンタテインメント性の高いイベントだったのです。
最近、日本ツアーでも、ファンサービス重視の姿勢を打ち出し、ファンにサインをしたり、一緒に写真を撮ったりということを、積極的に行うようになりましたが、そういうことは、欧米のプロの試合では、昔から行っていたことでした。
たとえば、アメリカのメジャーリーグで、試合が雨で中断すると、選手たちがグラウンドに出てきて、ヘッドスライディングなどのパフォーマンスをするシーンを見たことがある人も多いでしょう。
球場にきてくれた観客が、試合を中断している間も退屈しないようにと、選手たちはアイデアを練る。スタンドで観戦するファンはそれを見て、雨でズブ濡れになっているのも忘れて、大いに盛り上がる。ああいうショーマンシップを持った選手たちが、欧米のプロスポーツ界にはとても多い。
アメリカのプロゴルフツアーが魅力を失わないのは、「お客さんを集めて、その入場料で食べる」というプロスポーツの基本概念を、選手一人ひとりが自覚しているからなのです。
「ゴルフは100球打つより見てなんぼ!」(ゴルフダイジェスト新書)より