「290ヤード以上」飛ばないと勝てない試合だった!?
8007ヤードという男子ツアー最長のセッティングで開かれたミズノオープンは秋吉翔太選手の初優勝で幕を閉じた。優勝スコアは1アンダーと非常に難しいセッティングだったことがわかる。
以前、男子ツアーの距離は、女子ツアーの水準に比べて平均飛距離などの観点から考えると非常に短いと書いたことがある。だが、今回の8007ヤードというのは、女子ツアーに置き換えた場合でもかなり長いといえる。
女子ツアーで長いコースは6700ヤードほどの設定だが、これを男子ツアーに換算した場合は7900ヤード相当になる。それに比べても100ヤードほど長い設定なので、やはりスコアは出にくかったことが予想され、結果そのとおりとなった。
今大会のスタッツを分析してみる。これだけ長いとやはり長距離ヒッターが有利なのではと直感的に感じるわけだが、結果はどうだろうか。4日間トータルアンダーパーは優勝者の秋吉選手以外いなく、その他3人がイーブンパーで他は全員2オーバー以上と稀に見るほど平均スコアは高かった。
最終的な上位4人(秋吉、川村昌弘、小林正則、M・ヘンドリー)の平均飛距離は25位、15位、32位、14位と、とくに飛ばしが有利という感じではないように見えるが、もう少し深掘りしてみる。
平均飛距離が今大会トップ3(トップは314ヤード)だった選手の成績は47位、13位、62位と圧倒的に飛距離が優位に働いたという結果ではなかった。ただ、改めて今大会トップ4の飛距離を見てみると、それぞれ約297、299、290、299ヤードという数値だった。全員が290ヤードを超えており、うち3人はほぼ300ヤードであった。
日本プロを制した谷口徹選手の今年の平均飛距離が263ヤードで、今年記録のある全ツアー選手の56位(全112人の真ん中)が283ヤードだということを考えると、今大会のトップ4はかなり飛んでいるほうだとういうことがわかるだろう。さらに見ていくと今大会のトップ21の内、平均飛距離が290ヤードを切った選手は4人しかいなかった。これらを総評すると飛距離がかなり優位に働いていることが言え、目安は290ヤード以上だということがはっきりと見て取れる。
では、フェアウェイキープ率の観点からはどうだろうか? トップ4は上から41位タイ、41位タイ、46位タイ、33位タイと正直弱い相関だと言える。今回のトーナメントからも、飛距離>精度ということが浮き彫りになった。
下半身の動きが静かなスウィング
非常にタフだった今回の大会を制した秋吉選手のスウィングを分析してみる。
以前流行った左足1軸スウィングに非常に似ている。アドレス時から左足1軸というバランスではないが、トップで早い段階で左に体重を乗せ、そのバランスのまま左サイドを軸にインパクトし、フィニッシュまで行くスタイルだ。その分下半身の動きは静かで、腰の回転は平均的なプロの動きより少なく始動は遅い。どちらかというと手打ち寄りだ。
このスウィングスタイルは体の硬いアマチュアには非常に参考になる。腰を先に積極的にまわして行くトッププロのようなスウィングを真似するのは非常に難しい。もっとも難しいアクションと言っていいだろう。単純に腰を回す、切る、だけならできるのだが、腰を回しながら上半身は残すというのが難しいのだ。
なぜならよほど柔軟性がない限り下半身の動きに上半身はついていってしまい、下半身先行とはいえ、大きなアウトサイドイン軌道を生んでしまうからだ。データ的にもこの下半身始動の捻転を短期間でマスターするのは難しいので、多少手打ちになることを恐れず、秋吉選手のように左足に軸を置き、しっかりとインサイドからダウンスウィングを下ろしインサイドアウトのプレーンを意識することに専念するのはスライスに悩むアマチュアには有益だろう。ボールの回転数も落ち、ひっかけ、スライスの確率も減る。
同週に米ツアーで優勝したジャスティン・ローズも秋吉選手と同じく、トッププレイヤーの中では下半身の動きは静かなほうで、ややインサイドアウトのプレーンで安定したボールを打っている。
秋吉選手のダウンスウィングは切り返しでループを使い、フラットに低く落ちていき、インパクトの角度も非常に良い。データ的に、スウィングプレーン、インパクトは世界レベルだ。今後に是非期待したい若手の選手だ。