タイガー・ウッズがウェッジを契約先であるテーラーメイドの「ミルドグラインド」に変更したことを自身インスタグラムで発表した。ロフトは56度と60度と、スペックは従来通りなのだが……ここでふと疑問。タイガーって、そもそもなんで「PW-56-60」のロフトセッティングなんだっけ?

タイガー・ウッズは、昔ながらの「9本セット」を変えていないだけ

日本においては、ピッチングウェッジ(PW)のには52度のアプローチウェッジを入れ、その下に56度、あるいは58度のウェッジを入れるセッティングがプロアマ問わず一般的。それに慣れた身からすると、PWの“次”が56度のウェッジだと、一瞬「ロフト間隔が空きすぎてしまうのでは?」と思ってしまいそうになる。

Tiger WoodsさんはInstagramを利用しています:「Excited to be back at The Memorial. New @taylormadegolf #MGwedge going in the bag this week.」

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それに対して、「そもそも、PWの次がSWなのは“当たり前”だったのです」というのは、ギアに詳しいゴルフライターの児山和弘だ。「アメリカでは、長い間アイアンは3から9番アイアンにPWとSWを加えた9本セットでの販売が一般的でした。その頃、PWのロフトは50度前後。ですので、56度のSWにつなぐことには当然ですがなんの違和感もなかったのです」(児山)

タイガーの現在のクラブセッティングを見てみると、ドライバーの下に3番ウッドを入れ、その下には5番ウッド、もしくはユーティリティ的に2番アイアンを入れる。その下には3番から9番アイアンが入り、PW、SWとつないでいる。つまり、タイガーは、ただ“なにも変えていない”だけ。3番アイアン以下は昔ながらの「9本セット」と同じ構成になっているわけだ。

「実際、普通にゴルフをするだけならば、56度のウェッジがあれば十分なんです。しかし、時代に応じてコースの距離が長くなり、グリーンは硬くなり、ラフは長くなりました。それに対応するために、60度のロブウェッジが生まれたんです。タイガーのPW-56-60度のセッティングは、従来の“9本セット”にグリーン周りに特化した60度のロブウェッジを足した構成となっているわけです」(児山)

さて、疑問は解消したが、最後に「日本ではなぜPW-52-58のセッティングが一般化したか」も考えたい。児山は、それは「ジャンボ尾崎さんの影響です」という。

「ジャンボ尾崎さんは、自身のモデルであるMTNⅢリミテッドエディションというクラブで、従来の9本セットのPWとSWの間にPSというクラブを入れました。これにより、日本ではPWとSWの間に“1本足す”のが常識となっていったのです」(児山)

画像: 日本独特のクラブ「PS」は、ジャンボ尾崎の発案ではじまり、写真の「ジャンボMTNⅢプロモデル」の大ヒットもあり、広まっていった

日本独特のクラブ「PS」は、ジャンボ尾崎の発案ではじまり、写真の「ジャンボMTNⅢプロモデル」の大ヒットもあり、広まっていった

2003年7月の月刊ゴルフダイジェストには、ジャンボのこんなコメントが掲載されている。

「たとえばロブショットが必要なコースとか、もっとロフトの開いたクラブが欲しかった。そしてSWのロフトを開けば、PWとの差がますます大きくなるから、どうしても”その中間”が必要だった」

こうして、日本ではロブショットとサンドウェッジを兼ねたウェッジが生まれ、同時に、PWとSWの間を埋めるウェッジが生まれた。一方、タイガーは、慣れ親しんだアイアンからウェッジにかけてのロフトセッティングを、デビューから20年以上が経った今も変わらず使い続けている。日本のプロに58度の使用者が多く、アメリカのプロは56度の使用者が少なくない(それに、60度、もしくは64度のロブウェッジを足す)のも、こんなところに遠因があるのだ。

みなさんのバッグには、何度のウェッジが入っているだろうか?

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