ロフト6度、長さ48インチ、硬さXXXのクラブで戦う
「飛距離ナンバー1」の座をかけて、全国から飛ばし自慢が集まるドラコン日本選手権。東名CC(静岡)と三鈴CC(三重)で行われる予選を勝ち抜くと、7月15日(日)~16日(祝・月)に開催される決勝大会へ出場できる。
そこで優勝した選手は、日本代表として世界大会に派遣される。ワールド・ロング・ドライバーズ・チャンピオンシップ(WLDC) の公認による、11の協賛各社にスポンサードされた、国内最高レベルのドラコン競技だ。
使用クラブはSLEルール適合品で、クラブ長さは最長48インチ。競技で使われる公式ボールは、アメリカン倶楽部がドラコン用に開発した、コンプレッション110と一般的なコースボールよりも硬い「Charger X」だ。世界大会で使用されるボルビック(Volvik)のボールと同じコンプレッションだが、ヘッドスピード(以下HS)が60m/sを超えるドラコン選手が打つと感触が軟らかく感じるようだ。
試合会場には、戦闘服をイメージさせるような派手で“ちょいワル”なウェアを身にまとった選手、ポロシャツがはち切れんばかりのマッチョな猛者、体格はスマートながら鋭いスウィングでボールを飛ばす歴戦の強者が集まった。
一本足打法でクラブを振りちぎる豪快なスウィング、ヘッドが顔の下に見えるくらいバックスウィングを回しきる超オーバースウィング、ティアップを高くして超アッパーにかち上げるスウィングなど、まさに個性派ぞろい。そして会場には、徹底的な“飛ばしチューン”をした地クラブのヘッドやオリジナルシャフトが目立った。
それらのドライバーのロフトは6度とか8度、シャフトは3Xの“スーパーハード”もあればグニャグニャでヘッドを走らせるタイプなど多種多様。風向きやその日のコンディションに対応するため、スペック違いのスペアクラブを用意する選手が多かった。
競技はカテゴリー別に2~3人が1グループとなって飛ばし合いをしたが、基本的な流れは、マット打席で3分間の練習をしてから本番の芝打席に移り、3分間の持ち時間の中で6球を打ち、ベストの1球がその選手の記録となる。打球の測定範囲は、左右幅40ヤード(狭まる場合あり)・縦幅270ヤード以上を基準として、レーザー測定器で飛距離を計測する。
選ばれし飛ばし屋が集う「チャンピオンズリーグ」では、327ヤードの同記録でトップに並んだ2人によるプレーオフ(1分30秒/3球)に突入した。ドラコン選手権で何度もチャンピオンに輝いている王者・南出仁寛はこの日、ワイルドカードで勝ち上がった“持ってる男”。そして、その南出をリスペクトするホープ・永江義経の2人は、同じクルマで試合会場に駆けつけるほど気心が知れた仲だ。
その結果はラストとなる3球目で、火を噴くような弾丸ライナーの340ヤードをぶっ飛ばした永江の逆転Vとなった。12年前にドラコンデビューをして、4年くらい前からオープンディビジョンで勝つようになりチャンピオンズリーグに上がった。職業は消防士。ドラコン時のHSは64~65m/sという。
「3球目は当たっちゃいましたね(笑)。普段のトレーニングは腕じゃなくて体幹がメイン。力づくでボールを叩くのではなく、南出さんのようにフェースにボールを乗せて運ぶようなイメージで打っています。ドライバーのロフトは6度と8.5度がありますが、横風が吹いていたのでスピンが減らせる6度のヘッドを使いました。シャフトは『インパクトボロン・リボルバー』(レーヴ)、40グラム台のフレックスX。軽いほうが速く振れるし、軽くてもインパクトで当たり負けしないので飛ばせます。ドライバーの長さは47インチです」(永江)
その永江は、かつて南出と対戦したときに、ここ一番で400ヤードを超える“想定外”のビッグドライブをマークされて負けたことがあったという。南出は永江にこういうアドバイスを送った。
「勝負どころで自分の“リミッター”を外して潜在能力を引き出せるようになれば、もっと上へ行けるはず。ボク自身、試合でリミッターを外して飛ばした翌日は、体がバキバキに張って辛くなります。これからまた、戦うことになるかもしれませんね」(南出)
アジア人初の世界ベストエイト、海洋冒険家……多士済済がしのぎを削る!
「シニアディビジョン」では、319ヤードを飛ばした酉川博文が優勝。2016年の大会では同ディビジョンでチャンピオンになり、世界大会ではアジア人初となるベスト8まで進んだ。15年のドラコン歴があるが、ドラコンで戦うためにシャフトメーカーまで立ち上げてしまったという、まさに人生をかけた戦いに挑んでいる。ドラコンのHSは65m/sだ。
「マン振りしても、トップがしっかり上がればシャフトがブレないので、原点(アドレス)に戻りやすいんです。スウィング的には、左腕をしっかり伸ばしてテークバックを深く大きくすることで、トップで右足に体重を乗せる。そこから左足に乗りながら、インパクトからフォローを大きくとるイメージです」(酉川)
ロフトは8度。ハイティでアッパーに捉えて、高打ち出し&低スピンでかっ飛ばしている。
さらに「スーパーシニアディビジョン」では、海洋冒険家として単独世界一周ヨットレースで活躍する白石康次郎が323ヤードでV。
「ゴルフが大好きなんです。勝って良かった、元気が出てきますね。人生は喜怒哀楽を噛みしめるものなんです。勝ったら嬉しい、負けたら悔しい。そういう思いができるのも、チャレンジや冒険をしているからこそですね」(白石)
「ウィメンズディビジョン」を制したのは、253ヤードを飛ばした名和瑞穂。ゴルフ歴は6年目、ドライバーのHSはマックスで51m/sという女子アスリートだ。ドラコン選手権は初めての出場だが、競技ゴルフの経験者だけに勝負どころでの集中力はさすが。力強いドローボールがさく裂した。
1球ごとに風を読み、打ち出し方向を調整しながら、持ち球の6球に集中してすべてのポテンシャルを出し切る。脳と体のリミッターを開放して、ここ一番の“火事場の馬鹿力”を発揮したドラコン選手たち。今シーズンの大会でも、魅力あふれる飛ばしとガチンコバトルが見られそうだ。
※記事内の記録は「予選第1ブロック」です。
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撮影/三木崇徳