ゴルフ歴はそれなりにあるし、練習もソコソコしているのだけど、スコアは100を切れない……なんてことはよくある話。どうしてゴルフは難しいのか、業界屈指のギアオタクでクラブフィッターの小倉勇人が考えた。

梅雨入りし、ゴルファーには嫌な季節になってしまいましたね。こんにちは、最近アイアンを新調したゴルフショップ店長の小倉です。今日はいつものようにゴルフクラブについてのお話ですが、ちょっと違った切り口です。おそらくみなさんはゴルフを始める時に、身近にいるゴルフ熟練者や初心者スクールなどでゴルフの基本を色々と教わったと思います。

ボールを打つための理論はもちろん、それぞれのクラブの役割などたくさんのことを教わったと思います。しかし私が知る限り、ゴルフクラブそのものの形状の説明をされたという方は聞いたことがほとんどありません。どういうことかというとゴルフクラブという道具は、他の道具を使う球技とは比べ物にならないぐらい特殊な形状をしているのにそのことを理解していないで使っている方がたくさんいらっしゃるということです。

他の球技で使用する道具は基本的にグリップ、つまり手で持つ所の延長線上にボールを打つポイントや面があります。野球のバット、テニスやバトミントンのラケットなどがそうですね。こういった道具は、持つ所の軸線に重心を持ってくるように設計されています。その方が扱いやすいからです。またスポーツに限らず日頃私たちが使用する道具で振ったり叩いたりする道具もよほど特殊なものでない限り持つ所の延長線上に重心があります。ハンマーや布団叩きなどですね。

画像: 練習量の割に上手くなれないとしたら、それはギア自体の難しさを理解していないからかもしれない

練習量の割に上手くなれないとしたら、それはギア自体の難しさを理解していないからかもしれない

しかしゴルフクラブはこの持つ所の延長線上に重心がありません。この持つ所に道具の重心がないのは、ゴルフクラブとアイスホッケーのスティックぐらいでしょうか。それぐらい日常にはない道具なのです。

人間はとても鋭い感覚を持っていて、道具を扱おうとすると無意識に重心を感じながら動かそうとします。ラケットなど振り方を教わってもいないのにある程度扱えるのは重心が握るところの延長線上にあり、ボールを打つ面が揃っているから。しかし、ゴルフクラブは握るところと重心がズレているためコントロールするのがとても難しいのです。

細かく説明すると長くなるので端折りますが、簡単に言うとこのゴルフクラブの重心のズレは、道具の特性として右打ちの場合、スウィング中振り上げた時にヘッドが右に開こうとする動きを生み、振り下ろす時に左に閉じようとする動きを生みます。重心が持つところと揃った道具であれば、このように使用した時に動こうとする力が発生するようなことはまずありません。

画像: ゴルフクラブの場合、持ち手の延長線上に重心はない(写真/三木崇徳)

ゴルフクラブの場合、持ち手の延長線上に重心はない(写真/三木崇徳)

そんな道具をいきなり持たされて振ってみろと言っても中々コントロールできませんよね。大抵初心者の方は、振り上げる時にフェースが開きすぎてしまい、インパクト付近でヘッドをスクェアに戻すことができないのでうまく打てない場合が多いですね。

さらに、ウッドとアイアンの違いもあります。アイアンなどはそれほど重心が深くなく、ボールをヒットするフェース面と重心がそれほど離れていないので練習を積み重ねれば比較的ボールをフェース面で捉えやすいですが、ドライバーなどのウッド類はヘッドに奥行きがあるため、重心とフェース面が離れてしまい、さらにボールを捉えるのが難しくなります。

画像: ウッドクラブは、必然的に重心とフェースに距離ができる。ゴルフに慣れると、この距離が“やさしさ”につながるわけだが……(写真/三木崇徳)

ウッドクラブは、必然的に重心とフェースに距離ができる。ゴルフに慣れると、この距離が“やさしさ”につながるわけだが……(写真/三木崇徳)

長さもありますが、ウッド類が難しいと言われるのはこの重心位置とフェース面のズレが大きく関わっているのです。前記した通り、人間は道具を扱う時、重心を感じています。ウッド類が苦手な方には無意識に重心を感じてスウィングしていますが、フェース面が重心よりかなり前に出ているため、イメージしたインパクトのタイミングより早くボールとフェースが当たってしまい、うまく打てない。なんて方も多いはずです。

個人的な意見ですが、私はまったくゴルフクラブを振ったことのない方には、レッスン的なものではなく、クラブの振り方のコツという前提をお話したうえでこうアドバイスしています。「テークバックすると自然とフェースが開くのでそれを閉じる意識を持ってください」と。トップから急加速するのでヘッドが左回転する力を持っているとはいえ、最初は意識を持たないとヘッドが戻しきれない場合が多いからです。

グッドショットの確率を上げるのもミスの幅を狭めるのも練習は不可欠です。ですが、使っている道具の特性を知っているのと知らないのでは、動かそうとする意識が変わってくるはずです。

This article is a sponsored article by
''.