梅雨のない北海道を除いた全国が梅雨入り。空模様が不安定で、空気もジメジメしているが、金曜日に開幕するニチレイレディスの開場である千葉県の袖ヶ浦CCはひときわ熱気に包まれている。今日12日、コースでは本選出場をかけた主催者推薦選考会、通称「チューズデートーナメント」が開催されているからだ。
チューズデートーナメントとは、トーナメント開催週の火曜日に開催される、その試合への出場権をかけた試合。男子ツアーでは月曜日に開催されるマンデートーナメントが一般的だが、女子ツアーの、それも3日間競技の場合は、火曜日に開催されることが多いため、そう呼ばれるわけだ。
今回のニチレイでは、9名の主催者推薦枠(=本戦出場権)を、プロアマ計55名が争った。その中にはつい先週の女子ツアー「宮里藍サントリーレディス」でプロデビュー戦ながら3日目まで上位争いを演じて注目を集めた小滝水音など若手もいれば、香妻琴乃、福島浩子などの実績組もいる。見事本戦出場を決めた香妻は言う。
「マンデー(実際はチューズデー。その通過)は大丈夫だと思っていたので、緊張はしませんでした。本戦も落ち着いてプレーできれば、今週、来週で“リランキング”上位に入れるチャンスはあると思います」(香妻)
そう、彼女たちが今週ひときわ“燃えている”のには理由がある。来週末に控えたリランキングの存在だ。リランキングとは、シーズンに2度行われる、その時点での賞金額に応じて移行の出場優先権を付与し直す仕組み。その第一回目が次週の「アース・モンダミンカップ」終了時に行われるため、対象選手たちは後半の出場権を確保すべく、必死になっているというわけだ。
現在“暫定リランキング”20位とほぼ安全圏につけている大出瑞月は、「(シーズン当初から)リランキングのことしか考えていなかった」と、こうコメントしてくれた。
「ヨネックスレディスで2位になれたので良かったですが、(それまでは)後半はステップ(2部ツアー)かなと思っていました」(大出)
このように、対象の選手たちは、6月のリランキングを短期的なゴールとしてシーズン序盤を戦ってきたことがわかる。それは、QT(年末に行われる、翌年の出場権を争う試合)上位の資格で序盤戦を戦った高橋彩華が、「(リランキングは)QTよりも難しいです。周りの人が上手くて、自分の技術の低さを痛感しています」とこぼすほどだ。
ちなみに、前出の香妻の現時点での獲得賞金額は約130万円で、“暫定リランキング”は54位。関係者によると、リランキング後も問題なくツアーに出場し続けられる目安となる順位は35位。現在35位の前田陽子の獲得賞金額は約320万円なので、まずはそれを上回ることが目標となる。
昨年のプロテスト1位合格者の松田鈴英は、現在暫定リランキング32位だが、下位選手が賞金を積み上げれば安全圏から弾き出される可能性もあるため、「今週、来週は前半戦の集大成のつもりで頑張ります。少しでも積み上げないと」(松田)と気合を込める。
リランキング前最後の戦いとなるアース・モンダミンは優勝賞金3240万円の高額賞金の大会であることもあり、一発逆転の可能性もあることから、たとえ安全圏にいるプロたちでも、1円でも多く賞金を積み重ねておきたいところだろう。
“追いかける側”にいる、暫定リランキング48位の竹内美雪は、自分のいる状況を“崖っぷち”と表現する。
「崖っぷちから上がるぞ! という気持ちで、やります」(竹内)
もちろんリランキング対象の選手たちが優勝争いに絡んでも不思議なことはなにひとつない。ただ、優勝争いとは別の部分で、女子プロたちの後半戦の出場権をかけた“梅雨の陣”が激化していることを知っておくと、女子ツアーがさらに奥深く楽しめる、かもしれない。