「イップスかもしれない」というパッティング
1996年生まれの高橋恵は13歳で初めてレギュラーツアーに参戦し、2戦目の「リゾートトラストレディス」で予選を通過。その3カ月後にはステップアップツアー「ANAプリンセスカップ」で金田久美子と下川めぐみの三つ巴のプレーオフを制するなど、同世代の中でも頭一つ抜き出た実力の持ち主でした。
2016年にプロ入り後、新人戦で優勝するなどそのキャリアは順調に見えました。しかし、いまだにレギュラーツアーでの勝利はなく、今季は予選落ちが続く状態となっています。その要因はパッティングにあると見ています。今季のスタッツを見てみると1ラウンドの平均パットは30.5714で93位と苦労しているのがわかります。
「ある時期から、合わせる動きが入ってスムーズにストロークができなくなって。(パッティング)イップスかも!? と思った時期もあります」(高橋)
プロが「手が動かない」というのは、いくつかの状態があります。始動がしづらくなる、テークバック後に切り返せない、フォローが出せないなどが挙げられますが、高橋の場合はインパクト手前からフォローに掛けての違和感でした。その違和感を消すため、昨年グリップをクロスハンドに変更をしたそうです。
「クロスハンドにして、手の感覚が変わりストロークがスムーズになりました」(高橋)
その結果、昨年末に行われたファイナルQT(編注:シードを持たない選手を対象とした、翌シーズンの出場優先度を決める試合)を見事1位でフィニッシュしています。天才少女はトンネルから抜け出したかに見えましたが、今シーズンの成績は上向いてはきません。
「イップスかもしれないと思いましたが、まだそのレベルではないはず」(高橋)
高橋は悩みを抱えながら、それでも「結局やるのは自分だから」と、出口が見えない中で葛藤をしています。才能があり、さらに努力が加わって素晴らしい成績を残せてきたからこそ、自分で答えを出すという強い意志があるのだと思います。
しかしプロ入りして2年目の21歳。まだプロとしてのキャリアは始まったばかりです。リランキングの結果次第では、レギュラーツアーの出場機会はいったん減るかもしれませんが、それは好機ともとらえられます。一度客観的な視点を入れて再構築をすれば、ジュニアの頃の強い高橋恵をもう一度見ることができると信じています。