ボールが上がりやすいのはウッド型UT。さらにシャフト先端の太さに注目!
ユーティリティというゴルフクラブのカテゴリーはずいぶん昔からあって、1950年代では、もっぱらアプローチやバンカーショットを成功させるお助け的なウェッジクラブに“ユーティリティ”と刻まれていた。
今ではロングアイアン代わりに入れるディスタンス系クラブの代名詞となっていることを思うと、昔ゴルファーと現代ゴルファーでは “お助け”してもらいたいショットの種類が違っているのだなぁと、少し考えさせられてしまう。
さて、余談はここまでにして今日の本題、ユーティリティクラブ(ロングアイアン代わり)の選び方について話を進めていきたい。
皆さんはユーティリティクラブというと、どういうクラブをイメージするだろうか。ボールが上がりやすくて、ミスヒットしてもそこそこ飛んでくれて、ロングアイアンなんかより絶対に打ちやすいクラブ、それがユーティリティのイメージだろう。ペラペラの3番や4番アイアンでは低弾道しか打てないのに、同じロフト領域でもしっかりボールが上がってくれる。ここで第一の見極めポイント、《ボールが上がりやすい》について、クラブの特徴をおさらいしていきたい。
《ボールがラクに上がって飛ぶ、クラブの特徴》
■ソールが広い(重心が深い)→上がる
■ソールが重たい(重心が低い)→上がる・スピンが減る
■投影面積が大きい(慣性モーメント大)→ミスヒットに強い
■ 軽量、長い、先端が細い(シャフト)→スピード上がる・打ち出し高い
上記のようなクラブの仕様、つまり、ウッド型になっていれば、キャリーを出しやすく、遠くにボールを運ぶことができる。似たようなウッド型のユーティリティが多くある中で、さらに細く見極めていくべきポイントは、シャフト先端の太さだ。これがアイアンと同じ太さになっていればある程度ヘッドスピードが出せるゴルファーに向けて作られていて、上げるというよりやさしく狙うというイメージを念頭において作られている。
一方、ウッドのようにシャフト先端が細くなっていれば、シャフトを最大限に使ってヘッドスピードを上げ、インパクトではロフトを増やして打ち出しを上げる! のが狙い。ヘッドスピードが遅めの人に向けたモデルであることの証だ。長さも前者はロングアイアンより少し長め、後者はさらに半インチくらいは長くなっているのが普通だ。
似たようなカタチ、同じロフトでもシャフト先端の太さによって上がりやすさが異なってくる。意外に知られていない、ユーティリティの見極めポイントである。
上げたい人にはオススメできない、ユーティリティの形状とロフト帯
ユーティリティといえば、もうひとつアイアンタイプが存在する。多少、ポテっとしていて、なんとなく普通のアイアンよりも打ちやすい印象。だが、使ってみるとそんなにやさしくは感じない、困ったヤツである。
毎年、全英オープンの時期になると各社の新しいアイアンUTが注目され、なんとなく今度こそ! と、買ってしまったりするけれど、プロが使うアイアンUTは結局どれもそんなにやさしくはない。普通のアマチュアでは打ち出しがウッドUTほど高くならないのだ。
実は、ここにアイアンUTの価値がある。不必要にボールが上がらない、むしろ狙って低く打てて、ミスヒットには強い。これこそプロが全英オープンで戦うために欲しがっている“お助け”機能なのである。普段、5Wを入れる選手でも全英の時はアイアンUTの2番を入れたりする。ボールが高く上がってしまう5Wでは、風に翻弄されスコアメイクにならない場合もあるからだ。男子プロが使うアイアンUTは、むしろ上がりにくい。もちろん、今ではアイアン型でも上がりやすいUTは一部にあるけれど、逆にそれらを男子プロが使うことはほぼないから見極めることは可能だろう。
アマチュアはユーティリティに上がりやすさを求め、プロは打点ズレに対する高い許容性を求める。それがそれぞれの求める“やさしさ”ということになるだろう。
ロフト選びについても同様だ。同じウッド型ユーティリティでも16度〜20度のロフトが立った番手は男子プロが使い、23度以上の番手は女子プロや一般アマチュアが使う傾向がある。ユーティリティはロフトによって対象ゴルファーが違い、その境界線がロフト20度前後にある。これもぜひ覚えておいていただきたいポイントである。
ユーティリティという言葉には、いかにも万能でその気にさせる響きがあるが、正しい飛距離、ゴルフとはボールがきちんと上がってナンボである。試打してみて、上がりにくく感じるモデル、上がりにくかったロフトは、いかに“ユーティリティ”であろうとも手出しは無用。海風吹き荒れるリンクスで戦うならば、その限りではないが。