今週は欧州ツアーのHNAオープン・ド・フランス(フレンチオープン)に注目したいと思います。この時期のヨーロッパは旅行者も多く、日がもっとも長い季節で屋外イベントなどがあちこちで行われ、ヨーロッパ全体が盛り上がる華やかな季節です。欧州ツアーにとってもここから全英オープンまでの約1カ月が一番華やかな季節になります。
フレンチオープンは1906年に始まり、第一次世界大戦と第二次世界大戦中以外は毎年行われてきたヨーロッパ大陸最古のナショナルオープンで、今年で102回を数えます。
歴代優勝者を見ると古くはアメリカから招待選手として出場したウォルター・へーゲンやバイロン・ネルソンといった名前があります。セベ・バレステロス、ニック・ファルド、ベルンハルト・ランガー、サンディ・ライル、ホセ・マリア・オラサバルなどに加え、近年ではマーティン・カイマーやグラエム・マクドウェルといったヨーロッパが生んだメジャーチャンピオンたちの名前がずらりと並んでいます。
開催コースのル・ゴルフ・ナショナルは今年のライダーカップ(編注:2年に1度開催される米国と欧州の対抗戦)の会場でもあるため、ヨーロッパだけでなくアメリカ人選手やファンも例年以上に注目しています。8万人を収容出来るチャンピオンシップコースということで2024年のパリ五輪の会場にも指定されています。
「バウンスバック」という英語はゴルフ中継ではボギーを打った次のホールですぐさまバーディを取ったときに「バウンスバックしました」というように「はね返る」とか「立ち直る」という意味でよく使われる言葉ですが、これはもちろんゴルフ用語ではなく、日頃の生活や人生においてもはね返って立ち直ることを「バウンスバック」と言います。
今大会ではバウンスバックしそうな選手に注目したいと思います。
まずはセルヒオ・ガルシア。ディフェンディングチャンピオンで迎えた今年のマスターズ初日の15番ホールでまさかの13打という大叩き。マスターズも含めそこから5試合で4回の予選落ちと絶不調に陥りました。
先週ドイツで予選を突破すると、最終日68で12位タイと久しぶりの上位フィニッシュ。今年の全英オープンは2007年にハリントンにプレーオフで敗れた悔しい思い出のあるカーヌスティ。リベンジを果たすためにそろそろマスターズの悪夢からバウンスバックしたいところです。
次にティレル・ハットン。昨年ハットンはこの欧州ツアーが一番華やかなフレンチオープンから全英オープンまでの4連戦で全て予選落ちという屈辱を味わいました。秋になると素晴らしいバウンスバックぶりで2勝を挙げましたが、今年は昨年のリベンジを果たしたいところです。今シーズンはやや低調気味でしたが、USオープンで6位タイに入り上昇ムードです。
そしてトーマス・ピータース。前回のライダーカップでチームは敗れたものの、ルーキーながら4ポイントを取り欧州チームでは稼ぎ頭になりました。その勝負強さからメジャーを近々取るのではと言われていましたが、今年に入ってから成績が振るわずワールドランキングも60位以下に落ち、今年のUSオープンは出場することすら出来ませんでした。また秋にライダーカッパーとしてパリに戻って来るためにもそろそろ今季の不調からバウンスバックしたいところです。
現在世界No.2のジャスティン・トーマスや世界5位のジョン・ラーム、世界10位でディフェンディングチャンピオンのトミー・フリートウッドらもエントリーしている豪華なフィールドの第102回フレンチオープンを制するのは誰でしょうか。