畑岡奈紗がまたやってくれた。米女子ツアーのメジャー第3戦KPMG女子PGA選手権最終日、9打差の23位タイからスタートしながら大会ベストスコア「64」の猛チャージ。プレーオフに進出し惜しくも敗れたものの19歳の新星に海外メディアも注目だ。
77年に樋口久子がこの大会に優勝したのが日本勢としては唯一のメジャー制覇の記録。41年ぶりの快挙とはならなかったがウォルマートNWアーカンソーの優勝に続くあわや2週連続Vのチャンスを作ったのだからあっぱれ。
この流れは畑岡と親交のある松山英樹の2016年と似ている。松山はその年一時帰国して挑んだ日本オープンで国内メジャー初優勝を飾ると、アジアで行われたWGC-HSBCチャンピオンズで圧勝。さらに三井住友VISAマスターズにも勝って、タイガー主宰のヒーロー・ワールドチャレンジでも勝利を収め、わずか2カ月でおよそ4億円を稼ぎ出した。
翻って畑岡は優勝こそ1回だが、常に上位を賑わしウォルマートでは優勝を争ったレクシー・トンプソンらに6打差と大きく水を開けると「ナサのプレーは完璧。見とれてしまうくらいだった。飛ぶしパットも上手い。欠点が見つかりません」といわしめた。
そしてメジャー最終日の猛チャージ。23位タイからトップタイに駆け上がった見事なプレーにライバルたちは警戒を強めている。
かつて米女子ツアーで賞金女王に輝いたシン・ジエは最終日にめっぽう強いことから“ファイナルラウンドクイーン”と呼ばれたが、目下同ツアーのファイナルラウンドクイーンは畑岡で間違いなし。
「宮里藍さんに憧れ」その背中を追いかけてきた畑岡。憧れの先輩は飛距離がない弱点をショットの精度とショートゲームで補い、飛ばし屋のブリタニー・リンシコムに「私のピッチングウェッジよりアイの4番ウッドの方がピンに寄る」と苦笑いさせた。だが畑岡にはトンプソンがいう通り宮里が持ち合わせていなかった飛距離がある。
右も左もわからなかった昨シーズンは予選すら通れず苦しい思いをした。だが今年は「NASA(米航空宇宙局)」のように唯一無二の存在になって欲しいと願いを込め奈紗と名付けた母が娘を支えてくれている。
海外で不規則になりがちな食生活をヘルシーでパワーが出る内容に変えてくれたのが母・博美さん。それゆえ海外メディアは博美さんを「ナサの最終兵器」と呼んでいる。
「選手はときに成功を怖がることがある」とアニカ・ソレンスタムを育てたメンタルコーチ、ピア・ニールソン。「こんなに良いことが続くわけがない」と気持ちにブレーキをかけてしまうのだ。畑岡には是非、成功を怖がることなく勢いのあるいま貪欲に勝利を狙ってもらいたい。