限りなくマン振りの中で方向性も出す
池越えでピンまでは残り240ヤード超。やや打ち下ろし、わずかに風は追い風。ピン方向には池の左端がかかり、池を超えてもバンカーが待ち受け、2オンのためにはキャリーで230ヤードはしっかりと必要な状況。
しかも川岸選手は今季獲得賞金がここまで約700万円と少なく、少しでも賞金を積み上げたいところ。仮に2オンに成功しても優勝の可能性は高くなく、万が一池に入れてしまえば順位が下がり、獲得賞金が数百万円変わってしまいます。
この状況でグリーンを狙うことは本当に勇気のいる決断です。しかしこの時の川岸選手は、すべてのリスクが消え失せて、グリーンに届くイメージしか浮かばなかったことでしょう。見事に2オンに成功し、イーグルパットこそわずかに外れましたがバーディでフィニッシュ。敗北の中で凄さを見せつけた姿に「お見事!」と思ったゴルファーは、私も含めて少なくなかったのではないでしょうか。
同じバーディフィニッシュでも、レイアップしての3打目勝負では優勝の可能性はありません。最後まで優勝の可能性を残したという意味でも、価値のある“イーグル逃し”でした。後半戦、大暴れしてくれそうな川岸選手のスウィングを、改めて見てみましょう。
その特徴は、お手本のような“オンプレーンスウィング”にあります。後方からの画像を見てみましょう。トップからインパクト、フォローに至るまでのシャフトの角度に注目してみてください。すべてがひとつの平面(プレーン)上にあることがわかると思います。
これは、下半身から得られる回転力に上半身がつられてついてきているから。オンプレーンの軌道上をシャフトが動くことでヘッドスピードが上がり、フェースの芯に当たる確率もアップします。このとき腕の動きでプレーンに乗せても意味がなく、体の大きな筋肉を使ってスウィングすること、しっかりと回転を意識することが大切なのですが、川岸選手はそれができています。
ニッポンハムレディスの最終ホール、230ヤード超のキャリーが必要な状況で、距離の出る川岸選手でもさすがにほぼ“マン振り(マックスの力加減で振ること)”していましたが、通常飛距離と引き換えに正確性が犠牲になるマン振りでも方向性にブレがないのは、スウィング自体がオンプレーンであることの賜物です。
持って生まれた飛距離の才能、努力で磨いたオンプレーンスウィング、そこにクラブもマッチしてくれば、それこそ鬼に金棒。後半戦は、その飛距離を武器に賞金ランクを一気に駆け上がってきそうな予感がします。