ハードウェアを変えるよりソフトウェアを調整する
たまにいいスコアが出たかと思うと、次のラウンドでは大叩き。前半がよければ、後半は崩れるし、その逆もあり。終わってみれば、結局いつものスコアに落ち着いてしまう……。これ、スコアの壁を越えられない、アマチュアの典型的パターンですよね。
その原因は、どこにあるのか。ひとついえるのは、アマチュアはスウィングをいじりすぎることです。ショットの調子が悪かったり、大叩きのラウンドがあると、「スウィングに原因がある」と短絡的に考え、「上手くなるには、とにかくスウィングを直さなきゃ、どうにもならない!」と思ってしまうのです。
なかには、ラウンドの度に、「今スウィング改造中なんだよね」なんていう人がいますが、そんなに頻繁にスウィングを変えていたら、当たるものも当たらないですよ。
実は、プロがスランプになったり、急に調子を崩すのも、スウィングを変えたことがきっかけになるケースがほとんどです。米女子ツアーでなかなか勝てなかった頃の、宮里藍ちゃんがいい例。彼女はドローが持ち球で、フェースが真上を向くくらい、トップでシャットフェースになるのですが、飛距離は出るけど、それでは硬くて速いグリーンでボールを止められない。シャットをスクェアに近づけて、フェード系のボールも打てるようにならなければ「アメリカでは勝てない」と考えたのでしょう。
でも、そのチャレンジは裏目に出てしまった。トップでのシャットフェースを直そうと思ったら、テークバックの始動で左手首を伸ばさずに、角度をキープする意識でクラブを縦に動かさないといけないのです。そのために、スウィングの始動からインパクトまでのタイミングが変わり、彼女の最大のセールスポイントである、“スウィングリズム”が変わってしまいました。
その後、ピア・ニールソンとリン・マリオットのコーチングで、「リズムは変えちゃいけないんだ」ということがわかり、スウィングを元に戻したら、勝てるようになったわけです。
たとえば、サッカーの日本代表監督が、選手のボールの蹴り方を直したりはしませんよね。ゴルフでも、プロの試合で優勝できる実力のある人が、スウィングを根本から変える必要なんてないのです。その時点で、ほとんど完成品なのですから。スウィングをフルモデルチェンジして、すぐにメジャーで何勝もするなんていう芸当ができるのは、タイガーくらいです。
「ちょっとフックの度合が大きくなりすぎているから、曲がり幅を修正しよう」という程度のソフトウェアの修正だけならいいですが、スウィングのリズムや、自然に振ったときに出やすい球筋といった、その人が本来持っているハードウェアの部分を変えるのは危険です。これはもちろん、アマチュアにもいえることです。
人それぞれが持っているハードウェアというのは、簡単に変えられるものではありません。なぜなら、それは意図的に作ったものではないから。視点を変えれば、意識しなくてもできるから、再現性が高いということです。これを自分からわざわざ崩すなんて、もったいないですよ。
11年シーズンにアメリカと欧州の両ツアーで賞金王になったルーク・ドナルド選手が、その年のシーズンオフにした練習はアプローチとパッティングだけです。「メジャーで勝つには飛距離アップが必要だ」なんて考えず、ただひたすらに自分のセールスポイントに磨きをかけたのです。
アマチュアも、安易なスウィング改造などやめて、自分の武器になるものを見つけて、それをとことん磨くことに時間をかけるべきです。
「ゴルフは100球打つより見てなんぼ!」(ゴルフダイジェスト新書)より
撮影/姉崎正