今年から施行された「リランキング制度」で後半戦の出場権を獲得し、その長身から放たれる飛ばしにも注目が集まる原英莉花。そんな彼女のスウィングを、データ分析の専門家であるゴウ・タナカが徹底解剖!

褒めるべきポイントだらけのスウィング

有村智恵選手の勝利で幕を閉じたサマンサタバサ ガールズコレクション・レディストーナメント。その練習日に、編集部の取材に同伴して会場の雰囲気、選手の練習風景などを見てきた。コース管理は非常に行き届いており、グリーンの仕上がりも柔らかめだが、スピードは速い感じで素晴らしい出来に感じた。

練習ラウンド、練習風景を見て、ひときわ目立って見えたのが原英莉花選手だ。すらっとした長身で、女子ツアーの中ではかなり細くモデル体型というのが際立って見えた理由ではない。私が注目したのは彼女のスウィングだ。

画像: 現時点(7月17日)の賞金ランキングは68位と、シード権も狙える位置にいる原英莉花(写真は2018年のサントリーレディス 撮影/姉崎正)

現時点(7月17日)の賞金ランキングは68位と、シード権も狙える位置にいる原英莉花(写真は2018年のサントリーレディス 撮影/姉崎正)

原英莉花選手のトップポジションはやや高めだが、左肘は真っすぐしっかり伸びており、その長いリーチを最大限に遠心力を生むことに生かされている。そのやや高めのポジションから切り返しでループを使い、垂直ではなく更にインサイドに落としていきオンプレーンに戻している。この動きは以前から私が何度も書いている、超一流にかなり多くみられる特徴的な動きであり、推奨されるものだ。

ループターンの使い手は多く、マキロイ、DJ、ファウラー、スピース、ガルシア、レキシ-・トンプソンなど挙げだしたらきりがない。現在日本人プロ選手でこの動きを使うプレイヤーは世界に比べ圧倒的に少ない。おそらく日本のスウィングの教科書では、この動きはあまり推奨されていないのがその理由だろう。

日本で成功してきた代表的プレイヤー(石川遼、松山英樹、宮里藍、ジャンボ尾崎、伊澤利光、丸山茂樹)でこの動きを使う選手が非常に少ないのもその大きな要因の1つだと推察される。ただ、一人だけ日本でもこの動きを使って大成功を収めた選手がいる。青木功JGTO(日本ゴルフツアー機構)会長だ。ただ、彼のスウィングはやや変則的と言われている。

原英莉花選手のスウィングでまた特徴的なのは、その切り返しの瞬間に右膝が一気に飛球線方向に向かって動いていく。これは腰がかなり速い段階で回転していくことのあらわれだ。

画像: 切り返しの瞬間に右膝が動き始めているのがわかる(写真は2018年のサマンサタバサ ガールズコレクション・レディストーナメント)

切り返しの瞬間に右膝が動き始めているのがわかる(写真は2018年のサマンサタバサ ガールズコレクション・レディストーナメント)

それほどまでに早く切られた腰にもかかわらず、彼女のグリップのポジションはかなりインサイドに残っている。これはマキロイ、トミー・フリートウッド、カール・シュワーツェル並、むしろそれ以上だろう。彼女の柔軟性がこの動きを可能にしている。

そして更に付け加えると、彼女は切り返しの瞬間に少し膝を曲げ沈み込む動きをする。そしてインパクト、フォローにかけて屈伸運動のようにジャンプし、上下の動きを使って最大限のパワーを、横回転に加えることに自然と成功している。これは、タイガーや、マキロイなど飛ばし屋であり、かつ超一流に共通する動きでデータ的にもかなり推奨される。

画像: 切り返しで膝が沈み込み、インパクトからフォローにかけて伸びあがる上下の動きもスウィングに組み込んでいる(写真は2018年のサマンサタバサ ガールズコレクション・レディストーナメント)

切り返しで膝が沈み込み、インパクトからフォローにかけて伸びあがる上下の動きもスウィングに組み込んでいる(写真は2018年のサマンサタバサ ガールズコレクション・レディストーナメント)

本当に難しい動きなのだが、彼女はそれを自然とやってのけているのだ。これは天性だ。そして驚くべきポイントはまだある。それはダウンスウィングで見られるタメだ。通常女子プロではこのタメができているプレイヤーは男子に比べ少ないのだが、彼女は男勝りにこのタメを作れている。松山英樹、石川遼よりもタメが作れており、同じ力で効率的に飛距離を出すという点では彼らを上回っている。

当然、最高のポジションから降りてくるので、インパクトポジションはR160(編注:インパクト時での腕とシャフトが作る角度が160度以内となる、筆者が提唱する超一流選手の共通項)を満たしており非常に優秀だ。フォローも縦に振り抜くのではなく横にワイド(編注:手の位置が体から遠い状態)に振り抜けている。

そして、そのスウィングプレーンから放たれる球は少し右に出て戻ってくるストレート系のドローボールだ。その最高峰のスウィングから放たれるショットの飛距離も世界水準と言える。あくまで練習ラウンドでの計測だが、私が見た同じホールで彼女より飛ばした選手は葭葉ルミ1人だった。その飛ばしも世界水準だと言えるだろう。はっきり言って非の打ち所のないスウィングといえ、修正の余地は残されていない。データ的にも、科学的にみてもスウィングを変える必要はない。あとは自分のスウィングを信じ、ショットのミスの傾向を把握、そして限定的にしていくことでマネジメントができやすくなり、より良いスコアに直結するだろう。

ただ、気になったことが2つあった。1つは練習中にショットを打つ時にターゲットをほとんど見ないことだ。これではイメージが作られていきづらい。ジャック・ニクラウスは弾道のイメージがターゲットにどう向かうかイメージできるまで打たないと言っていたことがある。マキロイもスピースもこれでもかというほど、ターゲットを何度も打つ前に確認する。

もう1つは50ヤードの練習をしている時間がかなり多かったことだ。この距離はコントロールが難しく、1発で寄せることが非常に困難だとデータでは出ている。中途半端な飛距離というのはここぞという時にコントロールが難しいのがその理由だ。どうせやるなら40ヤード以内の方が良い。この距離はデータ的にも寄せやすいと出ているからだ。手で投げられる距離で、イメージもしやすいというのがその理由だろう。

画像: 小技を磨くなら40ヤード以内がいいとタナカは指摘する(写真は2018年のアクサレディス 撮影/岡沢裕行)

小技を磨くなら40ヤード以内がいいとタナカは指摘する(写真は2018年のアクサレディス 撮影/岡沢裕行)

さらに言えるのは、自分のウェッジのフルショット(90~100ヤード)を徹底的に練習するほうがスコアメイクにつながる。パー5のセカンドショットで50ヤードを残すのと、100ヤードを残すショットは後者の方がリスクも少ない。様々な点から100ヤード前後のフルショットのほうがスコアメイクには良いのだ。

アマチュアの方もこの距離は意識すべきだ。中途半端な距離はアマチュアの人にとって、コンタクトがよりいっそ難しくなる。50ヤードとは実は近くにあるようで、かなり難しいショットなのだ。それなら自分のウェッジのフルショットを練習し、その距離をパー5、パー4で残すというマネジメントをすることがスコアメイクに大きく貢献するので意識してやってみてもらいたい。

余談だが、サングラスをずっとつけていた原英莉花選手は目が紫外線に弱いようで目薬も持っていたほどだ。私も同じ問題をかかえており、初めて会った私にもその目薬をすすめてくれるなど、人柄も実力も両方を兼ね揃えているように思えた。

彼女はワールドクラスに通用するベースを備えている。今後のさらなる飛躍にも是非注目したい。

画像: 潜在能力ワールドクラス「原英莉花」のスウィング分析【スウィング大辞典】 www.youtube.com

潜在能力ワールドクラス「原英莉花」のスウィング分析【スウィング大辞典】

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